573 決勝戦第二試合/ミリーVSムハド商隊のメンバー

 「ふっふっふ……」


 すると、仲間のメンバーがニヤリと笑い、黒剣を掲げているミリーを見下ろし、言った。


 「お嬢ちゃん、悪いことは言わねえ。刃を交わした後、すぐに降参することをオススメするぜ」

 「……」


 ……あっ、なんだろう!なんかざわざわしてきた!

 マナトは思った。


 いま、なんというか、とんでもなく大きなフラグが、立ってしまった気がする。


 「おいマナト、俺は少し、不安になってきたぞ……」

 「うん、ラクト、これは完全にヤバいよ……」

 「いやでも、まだアイツ自身の強さは分からねえんだよな?」

 「それは、そうなんだけど……」

 「……」

 「……」


 ……めっっっちゃ、ダメな雰囲気が出てきている!


 思いながら、マナトもラクトはどうしていいか分からず、ただ、ステージを見守った。


 「……」


 対するミリーは、無言でただ、黒剣を掲げている。


 ダガーは抜いたものの、仲間のメンバーはミリーの黒剣にやいばを交えることはせず、ダガーの刃先をマナのランプに照らして光らせ、反射させたりして遊ばせている。


 「嬢ちゃん、俺は紳士なんだ」


 ……うわ、なんか言い始めた。


 「俺は、さっきのマナトよりも、強いんだぞ」


 ――おぉ……!


 「そ、そうなのか……!」

 「さっきのマナトよりも強いとは……!」


 少し、観衆がざわつく。


 「おい、マナト、言われてるぜ?」

 「いやまあ、単純な体術勝負なら、僕は間違いなく商隊最弱だから、間違っていないっちゃいないというか……」

 「……てか、なんだろう、どんどん、アイツが弱く見えてくるんだが」

 「……」


 しかし、マナトとラクトと違い、観衆のほうは、仲間のメンバーの言葉に信憑性を感じたのか、なおもざわついている。


 ――ヒュッ!ヒュッ!


 すると、少し傾きかけている雰囲気を切り裂くように、ミリーは黒剣2刀を振り回した。


 そして、仲間のメンバーをまっすぐに見上げ、言った。


 「いえ!大丈夫であります!」

 「……ほう、なかなかの剣筋をしているじゃないか」


 仲間のメンバーが、なおも言葉を紡ぐ。


 「俺はこう見えても、剣筋を見ただけで相手の強さが分かるんだ。君もなかなかの腕前のようだが……」


 ……これはまずい!!まずすぎる!!


 その仲間のメンバーがなにか言えば言うほど、言葉をつむぐほど、マナトは戦慄した。


 ……彼の頭上には、もう、フラグというフラグが……!!


 「も、もう見てられない!!」

 「マナト、アイツ止めさせたほうが!」


 いてもたってもいられなくなったラクトとマナトが、駆け足でステージ際へ。


 「……それでも戦うか。まあ、仕方ない」


 ――スッ。


 ようやく仲間のメンバーが、ステージ中央でダガーを構えた。


 「悪いが、この勝負は、もらったぜ……!」


 もう勝ち誇った、仲間のメンバーの顔。


 ――キィンッ。


 黒剣とダガーが交わる。


 2人とも、同時に一歩下がった。


 ――わ……!


 試合開始の合図に会場が沸きかけた、次の瞬間、


 ――スアアアッッ!!


 ミリーが回転。


 仲間のメンバーを一瞬で通りすぎる。


 「ぐはっ!!」


 腹部を斬られ出血した仲間のメンバーが倒れた。


 「だよね!!そうなるよね分かってた!!」

 「おい!!大丈夫か!!」


 マナトとラクト、また他のメンバーも慌ててステージを上がっていった。

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