572 待ち受けるものミリー、再び/マナト賢者モード、再び

 「……あぁ、思い出したわ」


 ステージに立つミリーを見ながら、サーシャは言った。


 「あのコ、天廊で倒れていた……」

 「あっ、あの時の!」


 マナトも思い出した。


 ラクトを助けに、皆で諜報員本部の最上階にある天廊に駆け込んだときに、倒れていた諜報部隊の隊長だ。


 「そっか、あの時はたしか、メイドさんの服装をしてたような。でも、そうだとすると、サロンメンバーでは、ないんじゃ……」

 「ピンチヒッターなんじゃない?強いんでしょ?ラクト」

 「おう」


 すると、ラクトが腕を組みつつ、言った。


 「あの時、俺がジンに騙されていたというのもあるんだけど、天廊に入ってすぐ、アイツと交戦になったんだよ」

 「あぁ、なるほどね。でも、ラクトと同じくらい強いって……」

 「ああ、途中まで交戦したけど、マジで強かった。そんで、言ったんだ。俺と同じ人種だって」

 「えっ!」


 地べたに、足を伸ばして座っていたマナトは驚いてラクトを見上げた。


 ……バトレアンフォーシスってことか!


 「……あのコと、話、したの?」

 「ああ」


 サーシャの問いに、ラクトがうなずく。


 「でも、少しだけな。てか、向こうがかなり、一方的にペラペラしゃべってた感じだぜ。なんか、俺やアイツの人種は、他の人種に比べて血の流れが速いらしく、それを力に変えることができるとか」

 「……えっ!?」

 「あと、祖先は混血の道を選んだとかどうとか……」

 「えっ!?血の流れ!?それが、えっ、祖先は混血の!?なに!?なにそれなにそれ!?」

 「ぉおう!?」


 マナトは興奮して立ち上がって、ラクトに顔を目一杯近づけた。


 「ちょ!マナト近えよ!」


 その時、


 「は、はわわ……!」

 「こ、これは……!」


 マナトとラクトを見たニナと召し使いが顔を合わせた。


 「ま、マナトお兄ちゃん、こ、こんなところで……!」

 「ほ、発作が出てしまっておりますわ……!マナトさん!お待ちを!!」

 「……えっ?」


 見ると、召し使いがサーシャの背後に素早く回り、両手でサーシャの両目を覆った。


 「と、とりあえずこれで!さあ!続きを!!」

 「え、えっと……えっ?つ、続き……?」


 召し使いの言葉が、マナトには意味が分からなかった。


 そんなことをしている間に、仲間のメンバーはステージ中央へと歩を進めていた。


 ――シャキ……!


 ミリーが両手を背中に回し、背負っている2剣を抜いた。


 両方とも黒色の刃……黒曜石でできた両刃の剣。ミリーの背が低いせいもがあるが、背負わないといけないほどに、そこそこ長い。


 「……つ~か、おい、マナト」


 ラクトが、心配そうに、ステージの上でミリーと対峙する仲間のメンバーを見て言った。


 「アイツ、大丈夫なのか……?」

 「いやぁ……未知数。武器狩りの盗賊との交戦のときも、僕、戦ったところ、見てなかったんだよね……」


 そんな中、ステージ中央にたどり着いた仲間のメンバーが、腰につけていたダガーを抜いた。


 ミリーはすでに、2本の黒いやいばつるぎの一本を、前に掲げていた。

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