569 オルハンVSマナト⑫

 マナトを水流から引きずり下ろして引き寄せる。


 「らぁ!!」


 右手でマナトの左手を掴んだまま、オルハンは左拳でマナトの顔に殴りかかった。


 ――ブヨン……。


 「!?」


 ゼリー状の水。左拳が包まれるように水にめり込む。


 「くっ!まだまだっ!!」


 続けざま、膝蹴りを放つ。


 ――ブヨヨヨ……!


 「また……!」


 先と同じように、2人の間に入ってきた水流がゼリー状のクッションへと変わり、オルハンの膝を優しく受け止めた。


 「!!」


 ――シュォォオオオ……!


 マナトが右手で、水を溜めている。


 「んなことさせるか!!」


 オルハンは素早く自らの身体を一回転させ、


 ――ブンッッッ!!


 「ぅわっ!!」


 その勢いでマナトを振り回して思いっきり投げ飛ばした。


 マナトの先には、コーナー脇、オベリスク風の石柱。


 投げ飛ばしたことで、マナトは頭から石柱に突っ込むかたちになっている。


 足で石柱に垂直に着地するには困難な体制な上、多少その位置をずらせたとしても、大ダメージは免れない。


 そしてなにより、オルハンと違って石柱を破壊できるほどの技を持っていないのは、ここまでの戦いで明らか。


 「どうだ!!」


 ――シュルルルル!!


 「なに!?」


 石柱の裏から、水流。


 ――ブクブクブクブク……!


 広がり、丸くなる。


 ――ブヨヨヨ~~~ン。


 マナトの身体を、受け止めた。


 ……側面を通っていたっていう、3本目の水流か!!


 オルハンは気づいた。


 ――バシャシャ……!


 と、マナトの身体を受け止めた水のクッションが、ただの水となってステージに落ち、広がった。


 ――スタッ。


 「はぁ、はぁ……」


 マナトが肩で息をしている。


 「……ぐっ」


 ……先のテッポウウオでくらった箇所が、ビキビキ痛みやがる……だが!!


 ――ジジジジッッザザァアア……!!


 ……でもここだ!!ここで決めるんだ!!


 新たにウォーターアックスとウォーターシールドを生成。


 ――タァン!!


 そして跳躍。


 ――バシュッッ!!


 「!?」


 マナトの姿が一瞬大きくなり、オルハンの視界から消えた。


 ……ここに来てまっすぐ飛んで来やがったか!


 ――キュッッ!


 ……いや、振り返りざまのウォーターアックスで間に合う!!


 ――シュルルル……!!


 「なにっ!!」


 オルハン右側から、滑走のための軌道の水流。


 ……いや、違う!!


 一瞬の選択。だがオルハンは確信した。


 ……この水流はフェイク!!


 左へ。


 振り向くとともに、ウォーターアックスを振りかざした。


 「!!」


 視界の左端……オレンジとグリーンのチェック柄の、マナトのターバンの留めリボンを、目の端で捉える。


 「もらったぁぁあああ!!!」


 ――ジジジィィイイイイ!!!


 「ダメだ先輩そっちはッッ!!」


 声がした瞬間、


 ――パッッシャァァ……!


 「あ……!!」


 マナト……の映った、薄い水の膜を、ウォーターアックスで斬り払っていた。


 ――シュゥゥオオオ……!


 斬られた水の膜が揺らめき、その映し出す、逆方向でマナトが構える姿を揺らした。


 「テッポウウオ大口おおくち……」


 ――ドドドド……!!


 「くそぉぉおおお……!!」


 《ルナが思いを寄せる人……マナトさん、そのものだから!》


 ウテナの声が、頭をよぎる。


 《ルナと申します!これから、よろしくお願いします!》


 ルナの、声。


 「ル……」


 《先輩!交易お疲れさまです!》

 《先輩、ありがとうございます。話聞いてもらって……》

 《私は、守られたくない……一緒に、戦いたいんです……!》


 「ルナぁぁあああああ……!!」


 ――ドドドドドォォオオオ!!!

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