568 オルハンVSマナト⑪

 「んっ!」


 マナトが攻撃を避けると同時に、少し傾きながら両手を構えた。


 ――ピュン!


 至近距離でのテッポウウオ。


 「ウォーターシールド!!」


 ――ザザァ……!


 ウォーターシールドが間に合う。マナトのテッポウウオが、シールドの渦に巻き込まれて、吸収されてゆく。


 ……多少バランス悪くても、しっかり照準合わせてきやがる。


 思いながら、オルハンは跳躍。マナトを捉える。


 ……こっちにはウォーターシールドがある。気をつけていれば被弾はない!


 ――シュッ!


 ウォーターアックスで攻撃を加えてゆく。


 先ほどと同じく、細かく、連続に。とにかく、相手にペースを握らせてはいけないムーブをオルハンは心がけながら攻める。


 マナトも深追いしてこないが、先ほどのように確実にオルハンの隙を伺い、反撃の機会を狙っているのが分かる。


 「……」


 と、跳躍の瞬間にフワッと、マナトのターバンが少し浮いた。


 ……なんて目をしてやがる。


 その漆黒の瞳は、まるで研ぎ澄まされた黒曜石のダガーのような輝きを放っている。


 「……くっ」


 こちらが優勢なのにも関わらず、こちらが追い込まれているような錯覚にオルハンはとらわれた。


 初めて見る、本気になったマナトの瞳。


 ……いや違う。あれはずっと、俺がマナトに向けていた視線と同じ。


 オルハンは思い直した。


 そして、オルハン自身、マナトとの戦いで覚醒して、ウォーターシールドを発現したように、マナトにも、なにかがみなぎっているように見える。


 ……へっ、来るなら来いよ。


 覚悟はできた。


 ……どちらにしろ、なんとかマナトの動きを止める必要がある。


 「……」


 一瞬、オルハンはウォーターシールドに目をやった。


 ……よし。


 ――スタッ。


 オルハンが止まった。それに気づくや否や、マナトがテッポウウオの構えを見せた。


 「テッポ……」

 「いま!!」


 ――ブンッッ!!


 オルハンが、左手のウォーターシールドを横振りして投げた。


 「え!?」


 ――ピュゥウン!


 水の光線。


 ――ザァアアア!!


 だが、回転するウォーターシールドが吸収し、そのまま一直線にマナトに迫る。


 「くっ!」


 ――バシュッ!


 ギリギリのところで、マナトはウォーターシールドを回避。


 「そう来るよなぁ……!」

 「なに!?」


 マナトの跳んだところに、オルハンが先回りしていた。


 ――ジジジジ!!


 ウォーターアックスを振りきってゆく。


 「それなら……!!」


 ――スィィィイイイイ!!


 マナトが水流に乗って滑走。スピードに乗ったことで、ウォーターアックスを、これまたギリギリのところで回避。


 ――ズァァ!!


 振り下ろされたウォーターアックスが地面にめり込む。


 ――ジジジジ……。


 「……えっ?」


 ウォーターアックスが、地面にめり込んだまま、動かない。


 その時、


 ――バシャッ!


 「えっ!?」


 ウォーターアックスがただの水となって、地面に落ちて広がった。


 オルハンの姿が、ない。


 ――パシッ!


 オルハンの右手が、マナトの左手を掴んだ。


 ウォーターシールドとウォーターアックスで機転をつくっての、その上で水流の軌道を読んでの、オルハンの先回り。


 「やっと捕まえたぜ……!」

 「斧も盾も、おとりに……!!」


 ……とはいえ、新たにアックスもシールドも生成している暇はねえ……!


 オルハンは左手を握った。

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