567 オルハンVSマナト⑩

 ――スィィイイイイ!


 水流の上を滑走するマナトが、石柱の倒れた観客席を見ている。


 「あ、あぶないとこだった……!」

 「アイツ、石柱を真っ二つに……!」


 皆、すんでのところで回避している。


 「よかった、被害はないみたい。さすが、みんなキャラバン……」

 「よそ見してる場合かよ!!あまちゃんが!!」


 ――ジジジ……!!


 ウォーターアックスが飛ぶように伸びる。


 マナトの水流による滑走はものすごいスピードで、捉えるのは困難。


 ――シュルルル……!


 しかし、先をゆく水の軌道は、マナトのゆく道しるべを示していた。


 それに見慣れてくることで、オルハンはどこをマナトが移動するか、水の軌道で分かるようになってきていた。


 ――ジジジジィィイイイ!!


 それを先によんだ一撃。


 ――バシュッ!!


 「!」


 マナトの足元で水が弾ける。ウォーターアックスの回避のために、途中で水の軌道から離脱してステージに着地した。


 ――タッッ!


 その間にオルハンは地面を蹴って跳躍。


 「ようやく降りたぜ……!」


 マナトに距離をつめる。


 「おら!!」


 ――ジジジジ……!!


 ウォーターアックスでマナトに斬りかかる。


 ――バシュッ!


 マナトが素早く移動し、ウォーターアックスを回避した。


 ――ピュゥン!!


 マナトが回避しつつ、テッポウウオを放ってきた。


 「ムダだ!」


 ――ザザァ……!


 マナトのテッポウウオを、ウォーターシールドで吸収。


 「くっ!」


 マナトが険しい顔をした。


 「逃がさないぜ……!」


 マナトに粘り強くついてゆく。


 マナトの回避は一瞬の素早さはあるが、水流の滑走を組み合わせない限り、飛距離はそこまでだ。


 ――シュッ!シュッ!


 細かく速い剣筋の、ウォーターアックスの連続攻撃。ステージ上手脇で叫んだフェンのアドバイス通りに、戦いを展開してゆく。


 「!?」


 マナトの足が止まった。


 ステージの端へ……それも、先に石を破壊した場所へと、マナトを追い詰めた。


 ……いける!!


 オルハンは勝ちを確信した。


 「るあああ!!」


 ウォーターアックスの一閃。


 ――バシュッ!!


 「なに!?」


 マナトがバックステップで。ステージ外へと飛び出した。


 ……こいつ、自ら……だがどちらにしろ俺の……!


 しかし、


 ――シュルルルル!!


 「なんだと!!」


 自らステージ外へ飛び出たマナトの足元に、水流が伸びる。


 ――スィィイイイイ!!


 マナトが水流を滑走。


 ――ビィィイイイ!!


 「ぐぅ……!?」


 ……勝ちを確信して大振りになっちまったか!


 水流の上を滑走しながら、マナトがテッポウウオで攻撃してきた。


 ……一瞬のスキを突かれる!やはり最後まで油断は禁物か!


 マナトはステージ外をぐるりと旋回し、ステージ中央へ。


 ……ダメだ!ここでマナトに距離を取られちゃいけねえ!!


 思ったオルハンはすかさず跳躍。


 ――シュッ!シュッ!


 再びマナトに距離をつめて、ウォーターアックスでの細かい連打を繰り出してゆく。


 ――バシュ!バシュバシュッッ!


 ……くっ、はええ。


 自らの攻撃が遅い訳ではない。マナトの一瞬の回避が速すぎるのだ。


 あの一撃で石柱の上に避難することはマナトはしなくなったが、それでもマナトに触れることすらできない。


 ……マナトの動きの先の先を読まなければならねえ!裏をかかねえと……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る