562 オルハンVSマナト⑤

 「な……んだと!?」


 ――ブククッ……パァァン!!


 オルハンの背中に水流が集まり一瞬だけ膨張したかと思った次の瞬間、勢いよく弾けた。


 「ぐぁっ!!」


 弾けたその水圧で、オルハンが前方に強く突き飛ばされた。そこそこ距離のあるステージ端の外側まで飛んでしまうほどの、衝撃。


 「ヤバいあのままだとステージ外に出ちまう!!」

 「ああああ!!」


 ガスト達は無我夢中で叫んだ。


 「この……!!」


 ――ジジジ……!


 ウォーターアックスの水圧の音とともに、オルハンの目が見開いた。


 ――ブゥゥウン!!


 「こんのぉぉおおおおおお!!」


 飛んでいる身体を無理矢理ひねり、オルハンはウォーターアックスをステージに向かって振り抜いた。


 ――ズァズァズァズァズァ!!


 ウォーターアックスがステージに一線の亀裂をつくってゆく。


 ――ズァズァ……!


 そして、飛ばされる勢いがどんどん落ちてゆく。


 「よ、よし……!」


 ステージ端少し手前……オルハンはなんとか止まることができた。


 「おぉ……!」

 「よ、よかった……」


 ……それにしても、どうやって水流を……!


 「お、おいガスト!あのターバン野郎の後ろ……!」

 「えっ?」


 仲間に肩を叩かれ、ガストはマナトを見た。


 「あ……!」


 マナトの腰についている水壷から、細い水流が出ていた。


 ――シュルル……。


 その水流はマナトの腰から足にかけて這うようにステージに降り、床をつたってステージの側面へと流れてゆく。


 ……うまく身体をつたうようにして、目の前の水流の分裂でオルハン先輩に意識をそちらに向けさせながら、ステージの側面をつたって水流を移動させてやがったのか……!


 ――シュゥゥゥ……。


 そんなマナトが両手を引いて構えている。


 「!」

 「テッポウウオ……!」


 ――ピュゥゥウン!!


 マナトの両手から、水の光線。


 「くそ……!!」


 ――バッ……!


 前方に緊急回避、オルハンが受け身を取る。


 ――タタタ……!


 そのまま駆け出す。


 「くっ、はずした……!」


 マナトは言うと、少し、ターバンを上げてオルハンを目線で追った。


 「なんだよ……めちゃくちゃ強いじゃねえか……」


 ガストの仲間が、少し弱気な言葉を吐いた。


 「あのターバン野郎のほうが、強いのか……!」

 「おい!!んなわけねえだろ!!応援だ!!応援!!」


 ガストは怒鳴りつつ、マナトを睨み付けた。


 「……んっ?」


 ターバンを上げたため、少し、マナトの表情が見ることができた。


 余裕のない表情をしている。見えていなかった細く黒い眉毛からも、黒い瞳からも、必死の相がうかがえた。


 ……なんだよ。あのターバン野郎も、必死だったんじゃねえか。


 ガストは思った。


 ……もしかしたら、オルハン先輩の繰り出している、ウォーターアックスのような技はないんじゃないか?


 ここまでの戦いを考えてみれば、マナトの勝ち筋はステージの外へと落とす、ステージアウトばかりだ。


 ……それに、腰につけているダガーも使ってねえ。

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