561 オルハンVSマナト④

 ――ズァァァ!!


 「……えっ!?」

 「なんだいまの音!?」


 ガスト達は身を乗り出して、ステージを眺めた。


 「ステージにき、亀裂が……!?」


 オルハンの繰り出したウォーターアックスによる水の刃が、ステージを斬り裂いて亀裂をつくっていた。


 「すっげぇ……!」

 「あのステージ、石で出来てるよな?なんて一撃だ……!」

 「……いやてか、あのターバン野郎がいねえ!」


 先までステージ中央にいたはずのマナトが消えていることに、ガストは気づいた。


 「クソッ、どこに……!」

 「……あっ!おいガスト、あそこ!」


 ガストの仲間が、頭上を指差した。


 ――パァァ……。


 「う……」


 オレンジ色に光る、天井のマナの照明のまぶしさに、一瞬、ガストは目を細めた。


 「あ……!」


 ――スタッ。


 ステージ四隅に立てられている石柱の、その一つの頂点に、マナトが着地した。


 「やっぱり、すごい威力だ……あれをくらったひとたまりもないなぁ」

 マナトがつぶやいた。


 逆光で、下から見るとマナトは完全に黒いシルエットになっている。


 ――シュルルル……。


 2本の水流が少し遅れて、マナトに追い付いた。


 ……どうやって、あんなところまで!?

 ガストは思った。


 「へっ!」


 ――ジジ……!


 オルハンのウォーターアックスがもとの大きさに戻る。


 「い、いや、でもアイツが引いたことには変わりねえよ!」

 「そうさ!あのターバン野郎!ビビりやがった!」

 「めっちゃ離れたじゃねえか!」

 「ここから形成逆転していきた……」


 ――シュゥゥウウウ……!


 マナトを纏う2本の水流のうち1本が動いてオルハンへ迫る。


 「はっ!もうくらわねえぜ!」


 ――ザシュ!


 オルハンが、ウォーターアックスで水流を切り落とした。


 ――シュォオオ……!


 「オルハンもう1本!!」

 「へっ!!分かってるぜ!!」


 時間差で横から迫る水流に、返すがたなでオルハンが横振りした。


 ――ザッシュ!!


 水流が真っ二つに割れて勢いがなくなる。そしてステージにバシャバシャと落ちて広がった。


 「ぉるああ!!」


 オルハンがさらに返す刀で、ウォーターアックスを大きく振りきる一閃を放った。


 ――ジジジジィィイイイ……!!


 「おぉ!!」

 「すげえ!!」


 ウォーターアックスがしなり、石柱の頂上にいるマナトまで届くほどに射程が一気に伸びた。


 「おっと……!」


 マナトが石柱から離脱。飛び降りた。


 ――ガギッッ!!


 石柱の頂上にウォーターアックスがめり込む。


 ――タッ!


 オルハンが動いた。


 「おぉ!!」

 「今度はオルハン先輩が着地際を狙って……!」


 ――シュルルル……!


 新たな水流がマナトの足元から伸びた。


 ――スィィイイイイ!


 「!?」


 その水流に乗ったマナトが、水流の軌道に導かれるままに滑走してゆく。


 「んだよそれ!!」

 「そんなことできんのかよ!!」


 思わず、ガスト達は叫んでいた。


 「こいつまた……!」


 ――タッ!


 オルハンが切り返す。


 水流の軌道を見切るかたちで、次の着地点を予測して回り込む。


 「そうか!水流の方向で、ある程度軌道を!」

 「いける!!」


 ガスト達が思った、次の瞬間、


 ――ドッッ!!


 オルハンの背中に、突如ステージに現れた水流が直撃した。

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