559 オルハンVSマナト②/水を操る能力者同士の戦い

 ――バッ!


 深緑に輝くその肩掛けが、大きくたなびく。ガスト達から見てステージ奥へとオルハンは素早く跳躍した。


 ――シュゥウウウ……!


 オルハンの横を、水流が勢いよく通り抜ける。


 「おぉ!」

 「さすがオルハン先輩!」


 ――シュル……!


 「あ……!!」

 「オルハン先輩にも、水流が……!」


 オルハンの身体にも、水流が回り始める。


 ――ジジジジ……!!


 「おぉ!!」

 「なんだあれ!!」


 そしてその水流がオルハンの右手を通り、激しい水しぶきがあがり始めた。


 「これであいことさせてもらうぜ……!」


 オルハンの右手を通った水流が、はげしい音とともに、斧の形状をかたちづくってゆく。


 「ウォーターアックスだ!」

 「きたきたきた~!」


 ガスト達のいる近くで、声があがった。


 「ウォーターアックス……!」

 「かっけぇ……!」

 「いやダメだ!!オルハン!!」

 「えっ!?」


 ガスト達が驚いてステージ上手を見ると、サロンの仲間であろう男が大声を張り上げていた。


 「ステージの外から来るぞ!」

 「!!」


 ――シュゥィイイイ……!


 マナトの放った水流が、ステージから少し離れたところで曲線を描いている。


 「!?」

 「水流が曲がっ……!?」


 ステージの四隅にあるオベリスクの一つを中心軸にするようにして、水流が大きく回転。


 「くっそ!!追跡できんのかよ!!」

 「あぁ!!オルハン先輩!!」

 「ヤバい来ちゃうよ!!」


 跳躍したオルハンに、ステージの外から戻ってきた水流が再び襲いかかる。


 「くっ!」


 ――タッ!


 オルハンが地面を蹴る。バックステップして水流の軌道から外れた。


 「おぉ……!」

 「あ、危なかっ……!」

 「い、いや!なんかあるぞ!」

 ガストの仲間の一人が、マナトを見て言った。


 ――スッ。


 マナトがなにやら指を立て、合図を送るような仕草をしている。


 すると、


 ――シュシュシュ……!!


 「水流が分裂しやがった……!?」


 水流が枝分かれるようにして分裂、スピードはそのままに、3つの細い水流となってそれぞれ飛び交い始めた。


 ――シュゥウウ……!


 その3つのうちの一本が旋回、オルハンに迫る。


 ――ジジジ……!!


 「もう遅いぜ!!」


 ――ザッシュ!!


 オルハンのウォーターアックスが、迫ってきた水流の一本を切り落とした。


 「おぉ!!」

 「すげえ!!」

 「あぶないオルハン右斜め後ろ来るわよ!!」


 ステージ上手側、サロンの仲間の女が叫んだ。


 ――シュルルルル……!!


 「!!」


 水の流れる音が、オルハンの死角の位置にある右斜め後ろから響く。


 オベリスクから旋回してきたもうひとつが、今度は地面スレスレの位置でオルハンに迫った。


 「チッ!もう一本か!」


 ――タン!


 オルハンが舌打ちしながら跳び上がった。


 「おい!ターバン野郎が……!」


 マナトが、跳躍していた。両手を腰位置まで引いて構えている。


 ――シュゥォオオオ……!


 そして、その両手に水流が集まっているのが見えた。


 「なんだ!?」

 「なんか両手に溜めてるぞ!?」

 「ヤバい着地際を狙われ……!!」


 跳び上がったオルハンの足が、地面に着く瞬間、


 「テッポウウオ……!」


 ――ピュゥゥン!!


 マナトの両手から、これまで操っていた水流とはまったく違う、細く、鋭い、光線のような水流が放たれた。


 ――ビィィイイイ!!


 「ぐぁっ!!」


 水の光線がオルハンに直撃した。

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