551 フェンの不安/もうひとりの実力者
ユスフとその仲間がステージ上手側から姿を消したの見届け、オルハンが立ち上がろうとした。
「よ~し、んじゃいよいよ決勝……んっ?」
クセの強い司会が、ステージに立っている。
「むぃぃぬぁぁ……!!」
「……うん、なるほど。小休止みたいだね」
フェンが言った。
「小休止か。しゃーねーな」
言うと、オルハンはステージ上手側、戦いを終え、仲間から頭にできたたんこぶをいじられているラクトの後ろ姿を見た。
「予選の時からそうだったが、やっぱりあのガキ、ただ者じゃねえな」
「ああ。最後の一撃は、目線で終えないほどに速かった……!」
「ウテナと一緒……
オルハンが振り向いて、フィオナを見た。
「あぁ、なに、アンタさっきの聞いてたのね」
「おう。強いとかそういう話、してたからな。そういうのは、自然と頭に入ってくる」
「フフ……あらそう」
「でもその彼が負傷を負ったの、こちらとしてはかなり大きいんじゃない!?」
座っていたライラが身を乗り出して言った。
「それは間違いないね。……でも、それ以上に、向こうは、たぶんものすごい選手層が厚いよ」
フェンが言った。
「ほぼ全員が、実力者と思ったほうがいいと思う。それに比べて、こっちには戦闘においては、ウテナ、オルハン、フィオナといるけど、フィオナは負傷してしまった」
負傷してしまっている以上、決勝でステージに立つのはリスクがあることは、ラクトだけでなくフィオナにも言えることだった。
「そして、僕やライラは……」
フェンは少し険しい顔になった。
「ハッキリ言って、強さで言えばその3人に、劣る。つまり、向こうの陣営と対抗できるのは、難しいように思う……」
「……」
これまで、フェンサロンは、戦闘が得意な3人だけで戦っていた。
それに対し、これから決勝で戦う相手は、あの強いラクトという青年だけでなく、他に出てきた
「まだまだ、向こうは余力がありそうだ……」
「おいフェン。まるで俺とウテナのどちらかが負けるような言い草じゃねえか」
「そうだよオルハン」
「んだとぉ~?」
「素直に言うよ。ウテナとオルハンですら、向こうの厚い陣営に、どこまで対抗できるか、かなり不安がある」
「フェンの言う通りよ、オルハン」
フィオナも言った。
「……」
「俺は負けねえぞ!!特に、アイツには!!」
「……」
オルハンは言ったが、少し、重たい沈黙が流れた。
フェンの言ったことに対しては、手だてがないように思えた。
「……あっ、それなら、」
途中から落ち着きを取り戻して、また夢中でステージ上の戦闘を見つめていたウテナが、手をあげた。
「単純に強いってことなら、ここに……」
「えっ?」
ウテナが、サロンメンバーの中の一人の両肩にタッチした。
「あーなるほど」
「ありね。うん、ありだわ」
フィオナとライラがうなずいた。
「……へ?」
集まった視線に少し戸惑った表情で、諜報員のミリーは自分を指差した。
「じ、自分でありますか……?」
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