536 ミトの経験/切れる胸当て
――ガギィインッ!!
アイーダの伸びた曲剣が、ステージコーナー際の石柱にぶつかり、引っ掛かった。その
「なっ!?」
――グゥゥウウウン!!
ミトの振り抜いたダガーが届くよりも速く、曲剣がアイーダを高速に石柱へと引き寄せた。
――スタッ。
アイーダが石柱に、垂直に地面と平行になるように着地、曲剣を石柱から外し、ステージへと降り立つ。
「すっげ……!」
「あんなこともできるのかよ……!」
マナトの両隣、ムハドとケントが、思わず感嘆の声を漏らした。
……いや、あのアイーダって人が、ミトの攻撃にひいたことには変わりない!今の攻撃で少し、ミトが押してきているように思える!
マナトは思うと、アイーダを見た。
「……」
アイーダに余裕の表情はない。
「ミト!!追撃だ!!
そして、大声で言った。
「いけるよ!!コーナーに追い詰めたようなものだと思って!!」
「……」
無言で、ミトがうなずく。
――タァン!
そして跳躍。
「……来たわね!!」
意を決したように、アイーダも前へ出た。
「これでおしまいよ!!」
激しく曲剣を振るう。
――シャァァ……!!
それはまるで刃のついたヘビのように、迫るミトの行く手を阻む。速い上に動きが不規則で、どこからその刃が身体を引き裂いてくるか、分からない。
「危ないぞ!!ミト!!」
「気をつけろ!!」
商隊の仲間の声が響く。
「いや、大丈夫だ!!」
ラクトが叫んだ。
しかし、そんな曲剣に、ミトは突っ込んだ。
――キンキンキン……!!
四方八方から繰り出される曲剣の刃をことごとくミトが弾いてゆく。
「いけ~!!ミトぉ~!!」
ラクトが跳び跳ねながら叫んだ。
「す、すげえ!!」
「いける!!ミトくん頑張って~!!」
他の仲間も、大盛り上がりで声援を投げ掛けている。
「な、なんてヤツなの……!?」
アイーダサロン側からも、声があがった。
「あのアイーダ先輩の曲剣の動きが、見切られているっていうの……!?」
「いや、そんなこと、あるわけないわ!!」
「アイーダさま~!!勝って~!!」
負けじとアイーダを応援している。
「すげぇな……!」
ムハドも目を丸くして、ステージ上を凝視している。
「経験があるんですよ」
ケントがムハドに言った。
「マジか!曲剣使いと戦ったことが?」
「いえ、ジン=グールです」
――キィン!!
ダガーの横振りが、アイーダの曲剣の刃先を弾き飛ばした。
「くっ!」
「さっきのようにはいきませんよ!」
「!?」
――カィン!!
ミトがさらにもう一閃、今度は曲剣を上から叩きつけるように切りつける。曲剣の軌道が地面へと向かう。
「しまっ……!!」
アイーダが回避しようと、反射的に身体を仰け反らせた。
――タッ!
それをも読んで、ミトがさらに踏み込んだ。
「やっと、捉えましたよ……!」
――シュッッ!
下から振り上げるミトの一閃。
「くぅぅうううう!!」
アイーダが目一杯、身体を仰け反らせた。
そのためダガーの刃はアイーダの身体……ではなく、胸当てのヒモ部分を捉えていた。
――プツッ!
胸当てのヒモの部分をダガーが切り離す。
――ぶるるん!!
胸当てから解放されたアイーダの大きな胸が、飛び出るように大きく揺れた。
「あ……!」
しまった、やってしまったといった表情で、ミトが一瞬、硬直した。
「フッ、油断したわね……」
「!?」
――シャァァ……!
ミトの目の前を、曲剣が通りすぎる。
――ピッッ!
その曲剣の刃が、通りすぎざま、ミトの頬に少し触れた。
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