527 アイーダサロンのメンバーVSジェラード

 「速攻で攻撃してきやがった!」

 「ジェラードさん避けて!」


 ステージ下、ミトとラクトが叫ぶ。


 ――タァン!

 ジェラードの地面を蹴る音が鳴る。


 あわやレイピアのやいばが身体に届いてしまうと思われた寸前、ジェラードは横に跳んで回避した。


 そして、回避しながら、手に持っていた鍼灸用の針を、白装束のポケットに入れた。


 相手の、アイーダサロンのメンバーはレイピアをサッと引き、隙のない動きでジェラードから距離を取る。


 ――トッ、トッ……。


 そして、次の攻撃の機会を伺うように、少し横向きになってレイピアを構えながら、前後にテンポよく、小刻みに揺れ始めた。


 揺れる度、身に纏うシアンとマゼンタの色鮮やかな戦闘ドレスのような衣装がヒラヒラと揺れる。


 ――フゥゥウウウ!!


 主にステージ上手、アイーダサロン側のほうから、男の、太めの歓声があがる。その歓声につられてか、別の周りの観衆も声援があがった。


 「くそっ!あの女、結構人気あるじゃねえか……!」

 「ラクト!僕たちもジェラードさんを応援しよう!」

 「おう!」

 「ジェラードさ~ん!!頑張れ~!!」

 「勝ってくれ~!!」


 男たちの声に対抗して、ラクトとミトが声を張り上げ出した。


 ……正直、相手の女の人を応援したくなる気持ち、分かる。

 戦いを見ながら、マナトは思った。


 ジェラードは背が高く、白装束を身に付けているために身体は見えないが、肩幅が広いため、明らかに強靭な体格をしているのが白装束越しでも判断できる。加えて、ソースばりの濃い顔に、ひげ面。


 対して、相手のアイーダサロンのメンバーは華奢で、ジェラードとは、ひと回りか、ふた回り以上の体格差。その上、きらびやかな衣装に、少し化粧を施した、端麗な容姿。


 ……ジェラードさんには申し訳ないけど、どう見ても、ひげ面の強そうなおっさんに立ち向かう、美しい乙女って感じの構図だぁ。


 ――フレ!!フレェェエエエ~!!


 アイーダサロンの奥にいる男たちは立ち出して、応援の音頭を始めた。


 「おぉ……すごい……」

 「ああ。相手の女も、なかなか俊敏な動きだな」


 マナトの隣でケントが言った。腕を組んでいる。


 「……あっ、そっちですか」

 「えっ?そっち?」

 「あっ、えっとですね……いや、なんでもないです」

 「それにしても、お相手さん、ジェラードさんの強さに気づいてるな」

 「強さ……?いや、ジェラードさんは体格もすごいし、どう見ても強そうじゃないですか?」

 「体格だけじゃないんだ。ジェラードさんと正面きって対面するときに、分かるものがあるんだよ」

 「正面きって対面、ですか」

 「ああ。強き者の持つ、オーラって、言うのかな」


 マナトやケントが話している間にも、ステージ上では目まぐるしく展開している。

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