506 明昇雅突、明昇六弾
ウテナは、人前では決して、弱音を吐くことはしなかった。常に、自分の弱さを見せないように努めていた。
ジンに、なにかを犯されていた。
それが、ウテナを苦しめ続けていた。
そして、今もウテナは、必死で戦っている。
……まだステージに立つには、早い。
フィオナは思った。だが、みんなに求められれば、あのコは必ず立ってしまう。それは分かっていた。
フィオナの後には、オルハンが控えている。そのオルハンは、次鋒として出る気満々でいる。
「……」
目の前には、ナジーム。
――カカカカィン……!
フィオナの連続刺突を、サーベルでことごとく防ぎきる。
「……」
余裕の表情はしていない。
しかしまだまだ余力がありそうに見える。
メロ国内随一の強さと噂されているサロンのリーダーという肩書きは、やはり一筋縄では勝たせてくれない。
だが、それでも、負けられない。
……私がここで、倒す!!
刺突の連続攻撃から、斬撃を織り混ぜたコンビネーションにフィオナは切り替えた。
――シュッ!
フィオナの横振り。
「剣筋があまいぞ!!」
だがそれはナジームに反撃のチャンスを与えてしまった。
レイピアを避わしたナジームが逆になで斬りでやり返す。
――スッ。
間一髪。サーベルがフィオナの銀色の髪に少し触れた。切れた髪の毛がヒラヒラと落ちる。
「なに!?」
ナジームの視線から、一瞬、フィオナが消える。
「は、はかられ……!」
フィオナが目一杯、腰を低くしていた。
同時にレイピアを両手で握りしめ、地面スレスレに構えてナジームに狙いを定める。
……これは死角からの!!
ナジームが、目線を下に向ける。
「
フィオナの頭が見えてきた。
……足か!?腹か!?どこを狙っている!?
構えが下過ぎて、レイピアの剣筋までナジームは見えない。
――ヒュ……!!
レイピアの空を貫く音。
……いやどちらにしろ下位置であることには変わりはない!!
「はぁっ!!」
雄叫びをあげ、ナジームは叩きつけるようにサーベルを振りきった。
――ギッッッ!!!
「よし止めたぞ!!」
ナジームのサーベルが、フィオナのレイピアを上から止めた。
「ぉおおお!!!」
ステージ上、フィオナの咆哮がこだまする。
――フワッ。
ナジームの足が、地面から離れた。
「な!?」
ナジームの身体が宙へ。
同時にフィオナが跳躍。
明昇雅突で空中に投げ出された相手に繰り出す派生技。
「
六連続の高速連続刺突がナジームに襲いかかる。
「ぬぅううううう!!!」
ナジームがサーベルを口にくわえた。
――キキキキィン!!
サーベルを振り回して、四発まで耐えしのぐ。
しかし、もう二発が間に合わない。
「これで終わりよ!!」
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