502 ステージの上の激闘
「おぉ!フィオナさん踏み込んだ!」
ミトが、興奮して立ち上がった。
「やっぱり、ステージが広くなってるな」
すでに立ち上がっていて、周りの喧騒に負けないほどの声援をフィオナに送っていたケントが言った。
「たしかに」
「それに加えて、四隅のオベリスクの石柱。前回よりも戦術の幅が広がるだろうな」
「それにしてもフィオナさん、豪快なオープニングアクトでしたね!」
ステージ上、刺突を放ったフィオナは、素早く引いていた。
前後に小さくステップを入れている。ナジームの出方を伺っているようだ。
「……」
ナジームは、レイピアが通り抜けた側の頬を触っていた。血が出てないか確認している。
「フッ、血なら、出てないわよ」
フィオナが言った。
――タッ!
と、同時に、踏み込む。
――ヒュッッ!
もう一度、ナジームに突きを放つ。
――サッッ。
ナジームは大きく後ろに下がり、レイピアを回避。
「やっぱりビックリしてますね。はるか後方まで突き刺すような一撃だったし」
「だな!あのナジームって相手にも、フィオナの覇気が伝わってるんだろうぜ」
「いけ~!フィオナさ~ん!このまま相手にペース握らせないで~!」
「よっしゃフィオナいったれ~!!」
ミトとケントがはしゃぎながら、フィオナに声援を送っている。
「いやでもあのナジームって相手もすげえよ……!」
座りながら、身を乗り出してステージを見ているラクトが言った。
「あのサーベル、ダガー並みにはええんだが……!」
ステージ上、そのナジームは踏み込んできたフィオナに合わせるように後退し、刺突をやり過ごした。
するとすかさず、サーベルの
――タッ!
ナジームが跳躍。同時に、下から振り上げる一閃。
――サッッ。
しかしフィオナのバックステップのほうが、サーベルの動きよりも幾分か速く、その一閃は空を斬る。
が、ナジームはさらに前に出てきた。
「あっ!」
「まだ攻撃が続いて……!」
下から振り上げる一閃からの、今度は上から振り下ろすコンビネーションを前進とともに繰り出してきた。
フィオナのバックステップにナジームが追いつく。
「はぁ!!」
ナジームが雄叫びを上げ、それに呼応するように、サーベルがフィオナの上から残像を描き出す。
――カキ……!
レイピアが間に合った。レイピアとサーベルの交わる瞬間、両刃の動きが止まる。
――ィィイン!
と、振り下ろされたサーベルが、レイピアの
「サーベルの斬撃を受け流した!?」
「ふぃ、フィオナさんすご……」
フィオナの剣術に、ケントもミトも唖然としている。
しかし、ナジームは止まらない。
――ガツッ。
サーベルの柄の部分を、ナジームは口にくわえた。そのまま四つん這い状態になって、両手で跳躍。
「なんだあの動き!?」
体制を立て直すどころか、四つん這いになった状態のまま、ナジームがスピードに乗ってフィオナに突っ込む。
ほとんど這うかたちでナジームは詰め寄り、フィオナの足元に、口にくわえられたサーベルで襲いかかった。
「アイツヤバすぎだろ……」
「アゴどうなってるんですかね……」
ナジームの動きを見て、ケントとミトが驚愕して言った。
フィオナはバックステップで後方に下がりつつ応戦。
――キン、キィン……!
足元に迫るサーベルを次々とはじく。
――トンッ!
「!」
フィオナは一瞬、後ろを向いた。四隅のオベリスクのような石柱のひとつに背中が当たっている。
……コーナーへ追い詰められていたのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます