500 ウテナの到着/ナジームの分析

 「マジ!しょっぱなから、フェンとナジームのサロン同士の戦いかよ!」

 「今回の報酬競争1位と3位じゃねえか!」


 第一回戦からの好カードぶりに、観衆からは期待の声が飛び交った。


 「どっちが勝つだろうなぁ」

 「ナジームのサロンじゃないか」

 「いやいや、フェンのサロンだろ」


 そこいらで、どちらが勝つかの予想合戦が繰り広げられる。


 「いやでも、ナジームのほうが有利じゃないかな。あそこは、サロン全員がサーベル使いだぞ。メロのキャラバンの中でも、戦闘に特化している特徴のあるサロンだぜ?」

 「でもフェンのサロンだって、強いだろ。だって、フェンのサロンには、アイツがいるから」

 「ウテナか。たしかにアイツだけは、別格だからなぁ」

 「だろ?メロでいま、一番強いキャラバンが、フェンのサロンにいるんだぜ」

 「たしかにな。でも、1人が勝っても、2人が負ければ、負けだからな」

 「あぁ、なるほど」


 決勝トーナメントは、前回と違って2人ではなく、3人選出となっていた。


 それ以外は、前回と一緒。血が出るか、場外に投げ出されると、負けとなる。


 「それに、ウテナっていま、失踪中なんじゃないの?」

 「たしかにいないような……いや、お、おい!」


 ――おぉ~!?


 ざわざわと、観衆にどよめきが広がった。


 「見ろよ、いまステージ脇に出てきた、フェンのサロン側の、アイツ……!」

 「あれって……!」


 ステージ上手かみて脇……見ると、フィオナと、もう一人が、少し遅れてフェンのサロンに合流するようなかたちで、加わった。


 その一人は薄い緑色のマントに身を包んで、さらにフードを深く被って、完全に顔を見えなくしていた。


 「間違いねえ、アイツだ……!」


 顔を隠してはいるが、テント内にいる誰もが、あの人物以外、他の誰でもないことが分かっている様子だった。


 「おい、ナジーム、ウテナが戻ってきたみたいだ……!」


 観衆がどよめく中、ナジームの横に立っているサロンメンバーの一人が、焦燥感を少し滲ませた。


 「慌てるな。ウテナは剣術は使えん」


 ナジームはそのメンバーに、また、サロンメンバー全員に向かって、冷静に言った。


 「アイツの攻撃は、ナックルダスターによる打撃。こっちはサーベルだ。リーチで勝っている以上、距離を取って、相手の間合いに入らないようにして、細かくサーベルを振り回しながら石柱コーナーに追い詰めれば、刃先はウテナに触れるだろう」

 「な、なるほど」

 「ウテナの強さが一人歩きしているが、ワイルドグリフィン程度の獰猛主なら、俺らはソロで狩っている」

 「た、たしかに……!」


 ナジームが、階段を上り始める。


 「それに、最悪、ウテナには負けても、2対1で勝てばいいだけのことだ。ウテナは誰かに任せる。俺は……」


 ――ザッ。


 「確実に、一勝する」


 言い終わると同時に、ステージの上にナジームが立った。


 そして、向かい側の階段からも、一人、上がってきた。


 ――シャキ……。


 フィオナが、階段を上りきると同時に、腰につけているレイピアを抜いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る