498 決戦のステージ/ラクトの到着

 ――パアァァ……!


 オレンジ色のまぶしい光が、一瞬目をくらませる。


 天井部分、前よりさらに増えたマナのランプのシャンデリアがぶら下がり、その光が、ステージとその周りに燦々と降り注いでいた。


 テント内、中央には、真っ白な、ステージ。即席感のあった前回のステージよりも、高く、広くなっている。


 ステージの四隅には、オベリスクのような白い石柱。まるでなにか、神聖な儀式でも行われるのではないかというような雰囲気が漂っている。


 そして、そんなステージを、観客席が、すり鉢状に取り囲む。


 ――わぁぁ~!!


 続々と、キャラバン達が入ってくる中、すでに賑やかな喧騒が、巻き起こっていた。


     ※     ※     ※


 テント内は、いよいよ、満員に達しようとしていた。


 ステージから少し離れた一角に、ムハド商隊は陣取っていた。


 「いや~、それにしても、ものすごい熱気っすね~!」

 「こういうところで戦うのも、いいっすね!」


 マナトの前で、周りの盛り上がりを見回しながら、リートとケントの2人が、キャッキャしながら楽しそうに話している。


 「てゆうか、決勝トーナメント、誰が戦うんすか?」

 「えっ?リートさん、ムハドさんから聞いてないの?」

 「聞いてないっす。……ムハド~」


 セラとジェラードと話しているムハドに、リートが手をブンブン振った。


 「おう、リート、なんだ?」

 「決勝トーナメントの出場者、誰っすか?」

 「な~んも決めてねえな!」

 「あっ、マジすか。……えっ?じゃあ、どうするんすか?」

 「くじ引きでもすっか!」

 「あはは!いいっすね~そのノープランな感じ!」


 他のメンバー達も、興奮気味で話している。


 「……あっ!きたきた!お~い!」


 マナトの隣に座っているミトが、手を振った。


 「あっ!ラクト!」


 マナトも立ち上がって、手を振った。


 出入り口から入ってきた一集団の中に、ラクトを見つけた。


 ラクトの隣には、サーシャ。その後ろに、ニナ、召し使い、シュミット。


 マナトとミトの2人を見つけ、ラクト達はやってきて、ミトの隣に座った。


 「よう、ミト、マナト。へへっ、なんか久しぶりだな」


 ラクトが言った。穏やかな表情をしている。血色もいい。


 「ラクト、ケガのほうは大丈夫?」


 ラクトの左の肩から腕にかけて、包帯が巻かれているのを見ながら、マナトは言った。


 「ああ、もう、大丈夫だ。痛みもねえし」

 「でもその包帯、ぐるぐる巻きってヤツじゃない」

 「いや、ぶっちゃけこの包帯、ちょっと大袈裟なんだよな。もう、取っちゃって……」

 「……ダメ」


 包帯を取り外そうとしたラクトの手を、サーシャが止めた。


 「……まだ、安静にしておかないと、ダメ」

 「でも、こんなんじゃ戦えねえよ?」

 「……ラクトは、戦っちゃ、ダメ」

 「えぇ!?」


 ラクトがすっとんきょうな声をあげた。


 「えっ、俺、見てるだけってことに……!」

 「いや、ラクト、病み上がりだし、無理は、よくないんじゃない?」


 マナトもサーシャに同意するかたちで言った。

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