487 前夜②/買い物

 飲食、服、雑貨などなど……さまざまな店が軒を連ねる大通り。


 大きめの、オレンジ色のマナのランプの街灯が、等間隔に立っていて、頭上で明るく光っている。


 「わぁ~!目移りしちゃうね~」


 ニナが興味津々な視線を四方八方に向けている。


 「……」


 サーシャは、雑貨の店頭で立ち止まって、そこに置いてある、絵画に塗る用の筆を、一本一本、手に取って、毛先を確認し始めた。


 「あら、この服、いいですわねぇ……」


 召し使いは、女性用の服が売っている店に、入っていった。


 「あっ、マナト、武器屋があるよ」

 「ホントだ~」


 マナトとミトの2人は、武器を売っている店に入った。


 ダガー、長剣、サーベル、また、ボーガンなど、さまざまな武器が売られている。


 「へぇ~」


 また、ダガーひとつをとってみても、刃先が尖っているものや丸いもの、柄の長さが違うものなど、その種類は豊富だった。


 マナトもミトも、実際に手に持ったりして、確かめた。


 「おぉ……ミト、これ、軽いよ」

 「うん。でも、これだと、すぐに錆びたり、折れちゃいそうだね」

 「あっ、なるほどね」

 「そういえば、マナト、ダガーの剣術は、どれくらい上達した?」

 「いや、ぜんぜん……カッキョ~ンのままですぅ……」

 「……あっ!」

 「これ……!」


 他のとは違い、白い刃をしているダガーを、2人は見つけた。


 象牙のダガーだ。


 「んんっ!?」


 その値段を見て、ビックリした。通常のダガーの十倍はしている。


 「たっか……」

 「あはは、当然さ」


 店主がやって来て、笑いながら言った。


 「象牙のダガーは、珍しいからね。鉄と違って、軽い上に、丈夫で、歯こぼれもあまりしないんだ。その上、刃先を鋭くする加工も、難しいんでね」

 「やっぱりそうなんですね~」


 マナトは言いつつ、象牙のダガーをしげしげと眺めた。


 「……」


 そして、なんとなく、先のミトとユスフの戦い、また、ハウラとユスフのやり取りを、思い出していた。


 ……あの、ユスフって人の、能力って、もしや?


 「……そういうこと、なのかな?」

 「えっ?」


 マナトは、自分のお金を確認した。


 「ミトさ、象牙のダガー、買わない?僕のお金も合わせるからさ」

 「えぇ!?」


 しかし、ミトとマナトの銀貨を合わせても、象牙のダガーには、届かなかった。


 結局、なにも買わずに、2人は、武器屋を出た。


 「残念だったね」

 「あはは……いや、さすがに悪いよ、マナト」


 ミトは苦笑していた。


 大通りの賑やかさは、アクス王国のそれに負けないほどの盛り上がりを見せている。


 それでも、ジンの影響で、少ないほうなのだという。


 サーシャと召し使いも、なにやら購入して、合流した。


 「……あれ?ニナさんは?」

 「……あっ、あそこにいるわ」


 サーシャが指差す先、人だかりができていた。その中に、ニナもいた。


 「ニナさ~ん」

 「あっ、マナトお兄ちゃんたち!」

 「どうしたんですか?」

 「あ、あれ……!」


 ニナが斜め上を指差した。


 「うわ……」


 見ると、建物の2階の窓の、手すりの上に立っている、一人の若者がいた。

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