476 ルナ、マナトと散歩しながら

 マナトに連れられ、ルナは皆が食事している別室を出た。


 廊下に出ると、老執事や召し使いなど、数人が部屋を行き来しているのが見えた。


 と、マナトが手に持っていたターバンを被った。


 「ちょっと、外に出ましょうか」

 「あっ、はい」


 廊下を進んでいき、玄関の扉を開けて、外へ。


 「ちょっと、歩きませんか?」

 「はい」


 少し傾きかけてきた陽の光が、目の前に広がる草花に降り注ぐ庭園を、2人は歩き出した。


 マナトは、オレンジと緑のチェック柄の留めリボンが印象的なターバンを被っていた。


 「マナトさん、ターバン被るようになったんですね」

 「ええ」

 「……」


 マナトは無言で、少し、なにか考えているようだった。


 「……」

 「……」


 2人とも無言のまま、目の前の白とシアンの花に、視線を注いだ。


 ……誰から、もらったんだろう。


 すると、マナトは少し、下を向きながら、再び歩き出しつつ、口を開いた。


 「実は数日前、ラクトが、僕の姿に化けたジンに、さらわれたんです」

 「えっ!?」

 「あっ、でも、もう、助けることはできたんですけど」

 「それなら……たしかにラクトさん、いないな~って思いましたけど、そんなことが……」

 「かなりの重傷を負って、倒れていました。なぜかそこに、ウテナさんもいて……」

 「えぇ!?」

 「えっ!?知らないんですか!?」

 「し、知らないですよ!」


 ジンと交戦が会った夜以来、ルナのもとにウテナが来ることはなかった。


 「えっと、諜報員本部にあるですね……」


 一連の事件について、ルナにマナトが説明してくれた。


 「……それで、いまは、医療棟で、2人とも治療を受けてます」

 「そうだったんですか……」

 「ウテナさんも、いまは、元気にされているようです」

 「よかった。ホントに、よかった……でも、その天廊で、いったいなにが?」

 「ん~それがですね、ラクトに聞いても、覚えてないのか、あまり答えないらしくて」

 「そうですか」

 「はい」


 話が途切れ、無言のまま、2人は歩いた。


 「……」


 時おり、マナトはしゃがんで、庭園の、白とシアンの花を眺めたりしている。


 「……」


 チラチラと、マナトのターバンの、オレンジと緑のチェック柄の留めリボンが、ルナの視界に入った。


 「……ターバンの留めリボン、素敵ですね」

 「あっ、ホントですか」

 「よく、似合ってますよ」

 「えへへ、ありがとうございます」

 「……誰かからの、プレゼントですか?」

 「はい。リートさんから」

 「リートさん?」

 「赤い瞳の、黒赤い髪の毛の」

 「あっ、一緒にいた、男性の」

 「そうです、そうです」

 「……ふぅ~」

 「どうしました?」


 マナトが振り向いて、ルナを見つめた。


 「あっ、いえ。なんでもないです」

 「……痩せましたね、ルナさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る