466 護衛の言伝て
「再審査通りましたから~!」
「あっ、ホンマですか」
ハウラの動きが止まった。
護衛の一人が、ハウラに合掌し、一礼……仕切り直しつつ、言葉を次いだ。
「ハウラ殿、大変、失礼いたしました。あなた達の一行が、アブド公爵の直々の顧客であることを、先ほど確認いたしましたので」
「あぁ、よかった~」
ハウラの顔が、安堵の表情に変わる。
「現在、公爵は宮殿内にて公務中でいらっしゃいますため、我々護衛のほうで、宿までお送りするようにと」
「あぁ、おおきに~。助かります~」
「また、先ほど公爵より、そちらの地方や国の文化に疎くて、申し訳ないと、口添えしておくようにとのことでして……」
「いえ、こちらこそ、謝らなあきません~」
先までと打って変わって、ハウラはおしとやかな口調になっている。
「なあ?ユスフ」
「いや、血の確認を強制されたことについては……」
「なんや自分、いつまで昔いじめられてたことを根に持って……」
「ちょちょちょっとハウラさまぁ!?」
ユスフが狼狽しながら、ハウラの言うのを遮った。
「ハウラ隊長!」
「ユスフ!ここにいたのか!」
間もなくして、ハウラとユスフと同じ、商人騎士風の出で立ちの集団もやって来て、2人と合流している。
倒れていた護衛たちも、駆けつけた別動隊に介抱されていた。
「もう、大丈夫そうっすね」
「ええ。いきましょうか」
その光景を見ながら、リートとケントは言った。
「……」
――シュルル……。
しれっと、マナトは右に溜めていた水を、また、水壷へと戻し始めた。
「あのハウラって女の人……」
ミトが戻ってくると、ちょっと小声で、マナトに言った。
「あの、ユスフって男の人を、ダガーで……」
「あぁ、うん。頬、切ってたね」
いくらダガーやボウガンで攻撃しても護衛たちが触れることすらできなかったユスフを、ハウラは一撃で、なんの事もなげに傷つけていた。
「マナト、どう思う?」
「う~ん……ちょっと、分からないなぁ~」
「マナトでも分からないかぁ~」
「僕らが知らない能力であるっていうのは、確かかな。リートさんの火の能力とか、僕の水の能力とは、完全に別ものだね」
「うん、そこは僕も、そう思う」
「いやぁ、ヤスリブは広いねぇ~」
「だね~」
護衛が先導し、ハウラとユスフの一行の姿が遠くなる。
道が空いた。
「んじゃ、いくか~」
「うぃ~っす」
ケントとリートが「お待たせしました~」と、中にいたシュミットに言いながら、馬車の中へと入ってゆく。
マナトとミトも、自分たちが乗っていた馬車に戻った。
「……終わったようね」
「あっ!」
中に入ると、サーシャが目覚めていた。
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