460 戦いを見守りながら

 ――ゴッッ!!


 また、護衛の一人を殴り倒している。


 「……」


 無法者の男をマナトは見た。


 ……違法侵入してる人なんだよなぁ。


 目の前に、違法侵入している人物がいる以上……事件が起きている以上、見過ごすわけにはいかないというのは、マナトにも理解できた。


 しかし、加勢は、状況的に不可能。


 下手をすれば、自分たちがボウガンに打たれかねない。


 「ご、護衛の人たちを、増援したほうが……」

 「う~ん、ダメじゃないすかね」


 マナトは言ったが、リートが首を振った。


 「増援を呼び掛けてる間に、姿を消されてしまうっすよ」

 「なるほど……で、では、話し合いで、解決しません?」

 「いやダメだろ」


 さらにマナトは言ったが、ケントは首を振った。


 「そもそも、話し合いで解決するなら、目の前のような光景には、なっていないだろ」


 ――ドッッ!!


 話している間にも、無法者の男はボウガン隊の一人を蹴り倒している。


 「そうですよね……」

 「てかマナト、お前、戦いたくなさすぎだろ」

 「いや、そりゃ、戦わないで済むなら、戦いたくはないですよ……」

 「まあ、こういうのは、デザートランスコーピオンとか、ロアスパインリザードと出くわしたようなものと同じだ。いわゆる、事故だよ、事故」

 「な、なるほど」


 ……獰猛種と同じ扱いだぁ。


 「このヤロ!!」

 「なんなんだよお前!!」


 ――ビュビュッ!


 ボウガン隊が、再三、男に向かってボウガンを放つ。


 ――ザクザクッ!


 やはり、矢は男を避け、男の先にある巨木に刺さった。


 ……でも、戦うっていったって、どうやって、あの人と……?

 マナトは思った。


 「……ただ、どんなカラクリを使って攻撃を当てなくしているのかは、分からねえんだよなぁ」

 「はい、そうですよね」

 「というわけで、リートさん、お願いします」


 ケントが、隣にいるリートに向かって、頭を下げた。


 「たしかに、こういうときの、リートさん!」

 「えっ、僕?いやダメダメ」


 リートが首を振った。


 「ここ、巨木エリアっすよ」

 「あっ」

 「メロの国の人達が黙っちゃいないっす。こんなところで火矢飛ばして、万が一火事になってしまったら、彼を倒した後に、国中から攻撃受けてしまうっすよ」

 「たしかに……」


 ――チラッ。


 護衛たちと交戦していた、無法者の男の紫色の瞳が、キャラバンの村の面々に注がれた。


 「あっ、ヤバい、こっち見ましたよ」


 ――クイクイ……。


 そして、中指と小指に指輪をはめた左手で、男が、マナト達のほうに向かって、手招きしている。


 もう、護衛たちはほぼ倒されていた。


 「……」


 また、立っているボウガン隊の数人も、もう、言葉を発することなく、戦意を喪失している。


 「僕がいきます」


 ――ザッ。


 ミトが、一歩、前に出た。

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