458 無法者VS護衛隊
無法者の男は、余裕の表情で、護衛たちの動きに任せている。
男を護衛たちが取り囲んだ。
「なんだ?どういうことだ……?」
ケントがつぶやいた。
ミトも、マナトに言う。
「いま、護衛隊長の長剣、あの人を捉えてたよね?」
「うん、そう見えた」
「護衛隊長の動き、完璧だったよね?」
「うん」
「それなのに、当たってないって……」
「……」
……ミトも感じているんだ。
先の、男と護衛隊長の一瞬に、強烈な違和感を覚えていた。
なにかが、おかしかった。
マナト達の目の前では、男を取り囲んだ護衛たちが、それぞれしっかりと構えている。
「!」
男の背後にいる、両手にダガーを持った護衛が踏み出す。
「隊長の仇……!」
「むっ!」
男が振り向く。同時に右手を振りかぶった。
「遅い!」
男の拳の動きが、1テンポほど遅れていた。勝ちを確信した護衛は跳躍してツインダガーの斬撃を放つ。
――スァァ!
ツインダガーが、空を斬った。
「な……!?」
――ゴッッ!
「が……!」
男の打撃で護衛の顔が歪む。眼の光が一瞬消える。倒れた。のびてしまっている。
「まただ……!」
ケントが目を細めた。
「やっぱり、また……!」
ミトも、凝視しながら言った。
「……」
男がまた、左手を上向きに突き出して、護衛たちに向かって、クイクイ。
紫色の瞳の、少し垂れ気味な離れ目が、不適な視線を護衛たちに送った。
「フッ……」
そして、男の、少し大きめな口の端が、上がった。
「コイツ!!」
「もう許さねえ……!!」
――カチャッ!
「あっ、ボウガン隊が……!」
先まで、ボウガンを構え、矢先を男に向けつつ静観していた護衛たちが、その引き金に指をかけた。
隙を見て、完全に男に撃ち込むつもりだ。
「隙をつくるぞ!!」
「おう!!」
――ザッッ!!
長剣や双剣の護衛たちが一斉に、男に飛びかかる。
「よしこいや!!」
男も跳躍した。
護衛たちの刃の残像に、男の突き出す拳と蹴りの残像が重なりに重なる。
――ドッッ!!
「ぐぁ……!」
――ゴッッ!!
「ぐぇ……!」
護衛たちの刃の残像の上から放たれる男の打撃が、ことごとく命中する。
「なぜことごとく
ケントが険しい顔で、言った。
「この護衛たち、決して弱くねえ……むしろ、動きを見る限り、隊長も護衛たちも、かなりやり手だぞ。なぜことごとく
「い、いや、違うっすよ!」
ずっと黙って見ていたリートが、口を開いた。
「いま、気づいたっす!彼、攻撃を
「!?」
その時、
「くっそぉぉおおお!!!」
倒れていた、他よりも大きな体格の護衛が起き上がり、男に掴みかかろうと飛びかかった。
「おっと……!」
男が、一歩下がる。ここに来て、はじめて、回避する素振りを見せた。
「ぬぅぅうおおお……!!」
大きな体格の護衛は体制を崩しながらも、さらに距離を伸ばす。
――ゴッッ!!
「あぅ……!」
男の蹴りが護衛の顔に直撃した。
「もう寝とけや、諦めのわる……」
――ガシッ。
「よくやった……!」
「なに!?」
護衛隊長が倒れたまま、男の右足首を掴んでいる。
「いまだ!!撃てぇ!!」
ボウガンを持っている護衛たちが、引き金を引いた。
――ビュッッッ!!
放たれた複数のボウガンの矢のそのどれもが、完全に男を捉えている。
「……」
しかし、
「……なに!?!?」
その矢のどれもが、ちょうど、男の身体を避けるように軌道が曲がった。
矢が、男を通りすぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます