440 キャラバンの村の男性陣、格付け②
話している間に、貸倉庫の前まで歩いてきていた。
すでに馬車も2台、到着している。
貸倉庫に入り、シュミットの彫刻とサーシャの絵画をピックアップ。それぞれ、馬車に乗せた。
――ガラガラ……。
医療棟へと、馬車はゆったりと進み出した。
一台には 、マナトとミト。サーシャの絵画が倒れないようにしつつ、座っていた。
「いやでも、ミトはモテてるなって、近くて見てて思うよ」
「勘弁してよ……ぜったい、そんなことないと思うんだけど」
「……」
「……マナト?」
ミトが、無言になったマナトの顔をのぞきこんだ。
「あぁ、いや……」
「どうしたの?」
「うん。……いやほんと、さっき、たまたま、モテるモテないの話、してたからなんだけどさ」
「うん」
「サーシャさんが、戻って来ない理由……そういうことかなって」
「……えっ?」
もう一台には、シュミット、ケント、リート。彫刻とともに、乗っている。
「……なるほど。では、ジェラードさんはどうです?」
こちらでは引き続き、キャラバンの村の男性陣の格付けが続いていた。
シュミットは言った。
「あの歳くらいから醸し出てくる、大人の落ち着いた風格というか。その上で、話してみると、意外とお茶目だったりして、年下の女性から人気がありそうですが」
「人気ないっすよ。急に女の人の前で、裸になったりしちゃうんで」
「あっ、それは、ダメなヤツかもですね……」
「……フッ、ちょっと、俺のこと忘れてません?」
「……えっ?」
ケントが、困ったように笑っている。
「いや、いつ、俺の名前、出てくるかなって思ってたんですけど」
「あはは、ケントくんは、どちらかというと、ジェラード路線っすよ」
「ふぁっ!?」
「……まあでも、」
リートが、髪の毛をクリクリさせながら言った。
「やっぱ、俺っすかね……結局のトコロ」
「えぇ?いやいや、さすがに、リートさんより、俺、上だと思うけどなぁ」
「何言ってんすか、まだまだっすよ、ケントくんは」
「そんなことないっすよ」
「ちなみに、」
シュミットが2人に言った。
「お2人、村の女性から、お菓子のほうは?」
「……」
「……」
――ギィィ……。
馬車が止まった。
真っ白な岩石で建てられて、周りの他の建物より際立っている建物……ラクトが運ばれた場所、医療棟に到着した。
皆、馬車から降りた。
「マナト、ミト、ちょっと、馬車見ててくれ。サーシャ連れてくっから」
「あぁ、ケントさん、でも……」
マナトがなにか言おうとした。
「んっ?どした?」
「……あっ、いえ、なんでもないです。ここで待っておきます」
「よろしくな!」
3人で、医療棟の中へ。
「……あっ、そうだ。ちなみに、ラクトさんは、どうですか?」
廊下を歩きながら、シュミットが問いかける。
「いや、ないない」
「ラクトくんは……そんなにっすね」
リートとケントが、首を横に振った。
「アイツはモテないですよ、シュミットさん」
「そうなんですか?」
「ぜんぜん、デリカシーないし」
「キャラバンの村ではモテてるイメージ、まったく、ないっすね~」
「村では、男友達とばっかつるんでるし」
「ウフフ……そうですか?私は、魅力的な方だと思いますが……あっ、ここですね」
――カチャッ。
ラクトのいる部屋の扉を、シュミットは開けた。
「おう~い、ラクト。入る……っ!?」
「なっ……!?」
3人の目に、入ってきたもの。
それは、ラクトの寝台を挟んで、睨み合う2人の女性の姿だった。
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