439 キャラバンの村の男性陣、格付け①

 「も、モテる男……ですか?」

 「そ、そんな話、してたんですか……」


 若干、シリアスな会話になりかけていたマナトとミトは、拍子抜けしてしまった。


 「シュミットさんと話してたら、気になっちゃって!」


 リートがお茶目な笑顔を2人に向けた。


 「ん~、そうだなぁ……」


 ケントはすでに、考えを巡らせている。


 「……やっぱり、まず出てくるのは、ムハドさんじゃないですか?」

 とりあえずという感じで、マナトは言った。


 「いやマナトくん。たしかにまずそこ出てくると思うんすけど、実は、意外と、そうではなかったりするのかなって、思うんすよね」

 「そうですか?」

 「あぁ、それ、なんとなく、分かる気がしますね」


 ケントが口を開いた。


 「たしかにムハドさんって、男前だし、実際、キャラバンの村のみんなから人気はあるけど、女の人から、恋愛感情という目線で見られているかどうかというと、割と、そうじゃない気がするなぁ」

 「そっか。言われてみれば」

 「あと、あれだろ。ちょっと、ムハドさんに向けた恋愛って、割と、女性からすると、敷居高かったりとかも、するんじゃね?」

 「あぁ、なるほど~」

 「ほう、そうなんですね」


 前を歩くシュミットが、振り向いて言った。


 「なかなか、興味深い。……でも、サーシャさまの召し使いさんは、完全に一目惚れしてると思いますよ」

 「えっ!」

 「マジっすか!」


 リートとケントが、驚きと好奇の入り交じった顔をした。


 「マジか、召し使いさん……そうだったのか」

 「ぜんぜん、分からなかったっす。……そうだったんすね」

 「ええ。おそらくは」


 ……シュミットさん、さらっと、他人の情事を暴露していくスタイルだ。

 ターバンの下、マナトはちょっと思った。


 「ん~、じゃ、まあ、ムハドも候補の一人っすね。他には?」


 ……あっ、いるじゃないか!しかも、隣に!


 「ミト!」


 隣で歩いているミトを、マナトは指差した。


 ステラをはじめ、何人いるかは分からないが、キャラバンの村の女子たちから、確定で好意を持たれている。


 「僕が!?あはは!まさか!」


 ミトは笑顔で、首を横に振った。完全に無自覚だ。


 「ほぉ~」


 すると、リートが、じ~っと、ミトを見つめる。


 「……たしかに、ミトくんて、中性的な顔立ちで、どこか清潔感あるし……あっ、思い出した!湖の村のラクダ交易中に寄ったサライで、村のキャラバンのコもいて、ジェラードがそのコの前で裸になって、気持ち悪がられたあと、たしかそのコに手を引かれて、どこかに……」

 「あぁ~、あったあった」

 「えっ!なにそれ知らないんだけど!?」


 少し前を歩いていたケントが急に振り向いた。


 「ミトお前、そんなにモテてたのか……!?」

 「い、いや、そんなことないですよ」

 「おぉん……ちなみに、ミト、最近女性から、手作りのお菓子とか、もらった?」

 「ええと……あっ、思い出した。ありました」

 「おぉん……」

 「優勝候補来たっすね……!」


 リートがつぶやいた。

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