433 ターバン①
「それに、ラクトくん、天廊での出来事になると、急に、口調がおかしくなるんすよね」
「そうでしたね」
「なんか、言葉を選びすぎてる感じだったっすね」
「確かに。ラクト、そういうの苦手だから、余計に違和感あったなぁ」
リートとケントは言うと、肩をすくませた。
「……」
マナトはうつむいた。
……ジンも、人間と同じじゃないか。
ジン=ジャンという、良心的なジンと出会って以来……いや、アクス王国での、ジン=マリードのときですら、思ったこと。
きっと、ジンとは分かり会える……。
その、自分の認識の甘さを、マナトは痛感しないでは、いられなかった。
「……まあでも、ジンの思い通りには、いかなかったって、ことで、いいんすよね?リートさん」
「そうっすね」
「えっ、どういうことですか?」
話をしているリートとケントに、ミトが尋ねた。
「『今回はやられました』って、ラクトが気を失う前、ジンが言ったらしいんだよ」
「へぇ」
「まあでも、ラクトはその後すぐに気を失って、気がついたら医療室の天井見てたって、感じだったらしいけどな」
「あぁ、まあ、そうですよね」
「とりあえずは、ラクトくんの完治を待つって感じで!」
リートは言うと、持っていた大きな袋を、ブンブン振り回した。
「……ところで、リートさん。その荷物は?」
マナトは聞いた。
「あっ、そうだったっす。それが目的でここに来たのに……」
苦笑しながらリートは振り回すのをやめ、袋を開けて中身を取り出した。
「……布、ですか?」
出てきたのは、真っ白な、肌触りのよさそうな長い布。
と、もうひとつ、頭に被る用の、つばのついていない、黒い丸帽子が出てきた。
「はい、マナトくん、そこ座って」
「あっ、僕ですか?」
リートに促され、マナトは寝台に座った。
「これをまず……」
マナトの頭に、リートは丸帽子を被せた。
「そんで……グルグルグル~っと!」
そして、持っていた真っ白な布を、リートは勢いよく丸帽子に巻きつけていった。
「ほい!」
マナトの頭部に、ターバンが出来上がっていた。
「おぉ~。さすがリートさんだぜ!手際がよろしい!」
「まだまだ~、これに加えて……」
リートは袋から、最後に、緑とオレンジのチェック柄の細長いリボンを取り出して、ターバンにひと巻きし、結んだ。
「ほい!出来上がり!」
「おぉ!さっすが、キャラバンの村のオシャレ隊長!」
「うん、いいんじゃない!オシャレターバン的な!」
ケントとミトが、ターバンを被ったマナトを見て、はやし立てるように言った。
「帽子の上からなんで、その形のまま、取り外しが簡単す!」
「あっ……、その……えっ、僕の?」
「そっすよ、マナトくん」
リートは笑顔で言った。
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