402 同じ人種の戦い

 フッと、ミリーが、身体をひねりながら、姿勢を低くした。


 ミリーの全身から発せられる、圧。その圧が、ジリジリと、ラクトの肌に伝わってくる。


 「参ります!!」


 ――スァアアア!!


 ものすごい勢いでミリーは回転しながら跳躍、双剣が空気を裂く音が聞こえたと思うともう、双剣の刃の軌道がラクトの首筋を捉えている。


 ――キィン!


 ラクトは双剣にダガーを当てて、その一閃の軌道を逸らした。


 「このヤロ……自分だけ言いたい放題、言いやが……」

 「はっ!」

 「うぉ!?」


 ミリーは空中でさらに身体を捻って回転力を増してラクトに2連撃を叩き込む。


 ――カィィン!!


 ラクトがダガーを、回転の遠心力で威力の上がった2つの刃に押し付けた。


 「と、止められ……!?」

 「……」


 回転の止められたミリーが地に足をつく暇もない一瞬の間に、ラクトがミリーとは逆方向に回転した。


 ――ブンッッ!!


 回し蹴り。


 「くっ!」


 ミリーは押し付けられたダガーを逆に力点にして、双剣を押し出すことで跳躍した。


 ラクトから、距離を取る。


 「な、なんてこと……」


 ミリーが驚きの表情を見せた。


 ……攻撃の型がしっかりしてやがる。


 攻撃すべてに無駄のない、完成された剣術……おそらく、剣術の師がいるのだろう、そう、ラクトは思った。


 ……いや、それ以上に。


 ジン=マリード、ジン=グールを目の前にして以来だろうか。あの時の緊張感が、ラクトの全身に駆け巡っていた。


 ――グッ……。


 ラクトが、深く踏み込んだ。


 「……来る!」


 ミリーが双剣を逆手持ちにした、受けの型をとる。


 ――タァン……!!


 しゃがむぐらいの低姿勢まで足を曲げたラクトは、そのバネで一気にトップスピードに乗って、ミリーに一直線に迫った。


 「は、はや……!」


 ミリーが一歩下がる。


 ――ヒュッ!!


 ラクトの、下から上へと振り上げる一閃。


 ――カキィン!!


 一歩下がったことでミリーはギリギリ反応でき、双剣で防ぐことに成功した。しかしラクトの腰の入ったダガーの一撃は、速いだけでなく、ずっしりと重い。


 「くぅ……」


 ミリーは仰け反り、体制を崩した。


 「もっぱつ……」


 ダガーを振り上げたラクトはその飛び上がった勢いのままさらに一回転。今度は上から下に向けてミリーに一閃を放つ。


 ――ヒュッ……。


 「!?」


 ラクトの目の前に、双剣の刃。


 「くっ!」


 ――ザザッザザザ……。


 よけるために顔をひねったことで体制が崩れ、ラクトは地面に転がりながらも、無理矢理体制を持ち直した。


 ――ツ~。


 ラクトの頬が、少し切れて、血が流れた。


 「はぁ……マジかよ」


 体制を崩した上で、ミリーは、引くと思いきや、逆にラクトに向かって踏み込んできた。


 その度胸……だけでなく、それを可能にしている、肉体。


 ……まさか、コイツ……。


 「驚いたのであります……」


 ミリーはミリーで、驚いた様子だった。


 「まさか、同じ人種とは……」

 「……」

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