398 諜報員本部④/広間での激戦

 「なっ!?」

 「あ、あの者は……!?」

 「どういうことだ!?」


 不意に7階の広間に姿を現したマナトに対し、諜報部隊から面食らったような声があがる。


 「……」


 ラクトは通路の角から、ほんの少しだけ顔を出し、広間を見守った。


 下で諜報員の男2人が、諜報員きっての実力者集団と称していた、諜報部隊。


 おそらくサロン対抗戦の途中で乱入し、マナトを取り囲んだ面々と同じか、違うにしろ、同じ実力のある者達なのだろう。


 その人数は、10人ほど。


 あの時は、リートやミトなど、キャラバンの村の面々がいての対峙だったが、いまは、マナト一人のみ。


 ……大丈夫なのか?


 ラクトの心配をよそに、マナトはまっすぐに諜報部隊に突っ込んでゆく。


 ――チャキッ。


 マナトが駆けながら、腰につけていたダガーを抜いた。


 ……アイツ、ダガーを抜きやがった!?


 「来るぞ!」


 諜報部隊が応戦の構えを取る。皆、ダガーや双剣など、小回りのきく短射程の武器を所持している。


 「俺がいく!」


 双剣を構えた一人が前に出た。


 「くらえ!」


 距離を詰めてくるマナトに対して、逆に自ら距離を詰め、双剣で2連撃を叩き込む。


 ――スッ!


 「ぬっ!?」


 次の瞬間、マナトは横を通りすぎていた。


 2人がぶつかり合う寸前、マナトは真横に細かく跳躍。双剣はマナトの残像を切るかのように振りきられていた。


 ……う、うまい!ダガーで斬り合いに持ち込むとみせかけて……!


 双剣の一人をやり過ごして、さらにマナトは前へ。らせん階段へと、一直線に向かっている。


 「いかせるな!!」


 ――バッ!!


 諜報部隊が一斉に動き、陣形を展開した。


 4人が素早く、そして、マナトの周りを四角く、正方形に取り囲んだ。


 「……んっ」


 マナトの動きが止まった。


 「回れ!」


 残りの部隊がその正方形の、さらに外側を囲むかたちで、円形にぐるぐると軌道を描きながら走り始めた。


 「いくぞ!」


 ダガーを持つ一人が、その円形から離脱して、中央にいるマナトに切りかかった。


 「!」


 ――キンッ!


 マナトは持っているダガーで、相手の攻撃をやり過ごした。


 相手はもとの円形の軌道へと戻る。


 「よし!続け!」


 別の一人が、マナトへ。さらにもう一人、別の角度から、マナトへと切りかかる。


 「……くっ」


 マナトは回避しながら、円の外に出ようと、踏み込んだ。


 「4点、交差開始!」


 その時、正方形の4人が動いた。


 対称軸同士の2人が連携し、同時にマナトに交差するかたちで攻撃。


 マナトは中央に押し戻された。


 「一気に畳み掛けろ!!」


 円と正方形から繰り出される息をつかせぬ連続波状攻撃が、マナトに襲いかかった。

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