391 7つ目の扉へと続く扉

 「……ちなみにシュミットさんは、7つ目へと続く扉は、6つのうちの、天の扉とお考えですかね?扉の印に、天使を施しているってことは」


 ムハドの言葉に、シュミットはうなずいた。


 「はい。そこについては、アクス王国の文献に書いてあったものに準拠したんです」

 「なるほど。……それじゃあ、」


 ムハドはしゃがんだまま、顔だけ後ろに向けた。


 ……うん?僕のほう、向いてる?


 「いま、ここに、実際に扉を開いたとされる能力者がいるんだから、せっかくだから、聞いてみようじゃないか、なあ?シュミット先生」

 「なるほど。それもそうですね」

 「てなわけで、マナトはどう思う?」


 ムハドとシュミットが、マナトに視線を注ぐ。


 「えっ、ええっと……そうですね……」

 「……」

 「……」

 「……すみません、まったく」

 「分からない、か」

 「はい」


 マナトは言った。


 「十の生命の扉については、前の世界では聞いたことがなく、このヤスリブに来てからも、キャラバンの村で、マナを取り込む少し前に、長老から少し聞かされただけで、意識したことなかったですし、マナを取り込んでいた時も、特に意識しなかったと思います」

 「なるほどね。……そんじゃあ、」


 するとムハドは、今度は、サーシャ達の後ろにいた、リートに視線を移した。


 「リートは?」

 「俺っすか?」

 「おう」

 「そっすねぇ~」


 リートは腕を組んだ。


 「……ちなみに、マナトくん」

 「……えっ?僕ですか?」

 「そっす。マナトくんは、隣り合う6つの扉のうち、どの扉に、よく入ってると思います?」

 「えっ、どれだろう……?」


 マナトは改めて、ティアの周りを囲む6つの扉の中の、第7の扉へと続く、天使の腰かけている扉を見つめた。


 ……苦しみ、欲望、修羅、安らぎ、知恵、天、か。


 「あの、ちなみに、天って?」

 「言い換えれば、幸福の扉、とも言うそうっすね」

 「なるほど。……どれも、まんべんなく入ってる気はしますけど……修羅の扉とか、天の扉は、僕の人生経験上、あんまり入ってこなかったんじゃないですかね……」

 「そうっすか」


 するとリートは、今度はムハドを見た。


 「ちなみに、あの、テント内でマナトくんにつっかかってきた水を操る彼、修羅の扉ばかり開いてたんすよね?」

 「はは、確かに」


 ムハドは苦笑した。


 「マナトの疑いが晴れてからも、ずっと修羅の扉入ってからなぁ。修羅の扉を開いた先にある修羅の扉に入ってたぜ」

 「つ~わけで、ぜんぜん、分からないってことっすね~」

 「そうですか……」

 「シュミットさん、俺も、大したこと、言えないんですよ。実際に、見たことが、ないから」

 「そうですよね」

 「だからこそ、いま、こうして、あなたの彫刻を見て、逆に、こうなんじゃないかって、思ったり、してますよ」


 ムハドが笑顔で、シュミットに言った。

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