388 夜の散歩

 「貸し倉庫は?」

 「この通り沿いにあります。数分で着きますよ」


 先頭を、ムハドとシュミットが会話しながら歩いてゆく。


 「近いな」

 「はい」

 「メロは、お得意先なのか?」

 「いえ、私も含め、岩石の村は大体、アクス王国ですよ。メロの国は、数えるほどです」

 「なるほど」


 次列には、ミトとケント、その後ろに、ラクトやマナト、サーシャ達、一番後方にリートと続いていた。


 「あっ!そういえば、サロン対抗戦、どうだった?」


 ムハドが振り向き、ミトとケントに聞いた。


 「はい、全勝でした」

 ミトが、笑顔で答えた。


 「おぉ!すげえな」

 「いやまあ、ぶっちゃけ、余裕って、感じだったっすよ」

 「ラクトさんが、先発で出て、活躍されてましたよ」

 「へぇ!」


 ケントもシュミットも加わり、4人で盛り上がり始めた。


 「……」


 歩きながら、ラクトは周りを見渡していた。


 近くに市場へと繋がる大通りがあるせいか、結構な人とすれ違う。


 「さっき、窓の外を見てた時も、ちょっと思ったけど……」


 ラクトが、隣で歩くマナトに言った。


 「なんか、割とみんな、あんまり、ジンを警戒していないように見えるんだが」

 「たしかに。……いや、そんなこと、ないかも」


 マナトが、斜め前方に視線を注いでいる。


 「あのおじさん達……」

 「んっ?」


 ラクトもマナトと同じ方向を見ると、年配の男性2人が歩いてきながら、周りに目線を送りつつ、なにやらコソコソと会話していた。


 「今度はあの住宅街に出たそうじゃないか……」

 「なんと……」


 男2人の会話が、すれ違いざまに、少し聞こえてきた。


 「……取り調べされてるとき、」


 男2人とすれ違い、ちょっと経ってから、マナトが口を開いた。


 「諜報員の人が言ってたんだけど、ジンについて、国内でいろんな情報が飛び交っているようなんだ」

 「あぁ、なんか、いつかのアクス王国みたいだな」

 「そうだね」


 ラクトの言葉に、マナトはうなずいた。


 「てかさ、俺、思ったんだけど」

 「えっ?」

 「これだけ国に人がいるんだから、みんなで団結して、ジンに立ち向かえば、いいんじゃねえか?」

 「……」


 マナトが、ラクトを見た。


 「……フフっ」

 「おい、なに笑ってんだ」

 「いや、ごめん。ラクトの言う通り、それができれば、最高だなって、思って」

 「だろ?」

 「でもそれって、ホントに難しい。人が、多くなれば、なるほど」

 「……まあな。さすがに、それは、俺もなんとなく、分かるぜ」

 「むしろ、その逆のほうが、多い」

 「団結の逆、ということか」

 「うん。……だからこそ、ウテナさんが、心配なんだ」

 「えっ……?」

 「精神的に、追い詰められているかも、しれない……」

 「……」


 と、前方を行く者達が、足を止めた。


 「皆さん、着きました」

 シュミットが言った。

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