386 マナトの報告

 「ムハドさん、い、いたのですか」

 「おうよ」

 「ケントさん、言ってくださいよ……あなたの座ってる角度的に、ぜったい、見えてたでしょ」


 シュミットが言うと、ケントは笑った。


 「あはは、いや~、いつ気づくかなって、思って」


 また、ムハドに続いて、リート、マナトと、列をなして入ってきた。


 「うぃ~っす」

 「お疲れさまです~」

 「おう、マナト。やっと終わったか」

 「はい、とりあえず、今日はって、感じで……」


 マナトは明らかに疲れた様子で、ケントに返事した。


 「ちょっと、腹ごしらえすっか!」

 「さんせ~っす」

 「は~い」


 ムハド、リート、マナトは、それぞれ、空いている席に座り、残っている料理に手を伸ばした。


 「モグモグ……そうだ。マナト、俺とシュミットさんが、彫刻見に行く前に、一応、ここにいるみんなには、言っておくか?」

 「ムグムグ……そうですね。そのほうが、いいと思います」


 ムハドに促され、マナトは皆を見渡した。


 「ちょっと、個室へ来てもらえますか?」


     ※     ※     ※


 宿屋の1階にある、マナトの個室に、皆集まっていた。


 一人用の個室に、10人以上……だいぶ、密。各々、床に座ったり、寝台の上に座ったりしている。


 「ふぅ」


 マナトはひと呼吸置き、言った。


 「ジンはどうやら、この国で、途中まで、僕に化けていたみたいです」

 「えっ!」


 そこにいた一同、一斉に、マナトに視線を注いだ。


 「最初この国に来た時、なんでこの国の人、僕のこと知ってるんだろうって思ったりしてたんですけど、その原因は……」


 マナトは軽く、ムスタファ公爵から聞いたという、この国における、ジン出現から、これまでの経緯を説明した。


 「……なぜか途中で、僕の変装を解いたようで。そして、いま現在、ジンが化けているのは、どうやら、ウテナさんで間違いなさそうなんですよね」


 ――バッ!


 寝台であぐらをかいていたラクトが、いきなり立ち上がった。


 「そうだったのか……!」

 「うん、そうみたい」

 「マナト、ウテナはいま、どこにいるんだ?」

 「それは分からない。でも、身に危険が及んだらしくて、避難したらしい」

 「……そうか」

 「心配だよね」

 「……ああ」


 ラクトはうなずくと、再び、寝台の上であぐらをかいた。


 「ジンは……」


 壁にもたれかかったまま立っているムハドが、口を開いた。


 「いまだ多くの謎に包まれていることばかりだ。だが、それでも、少しずつ、分かってきたことがある。ジンの種類などがそれだ。その中に、他人に化けるためには、その人に一度、接触する必要がある、というものがあってな」

 「あっ、それって、つまり……」


 シュミットの言葉に、ムハドはうなずきつつ、続けた。


 「そう。マナトは一度、この国で暴れているジンと、過去に、どこかで、会っていることになる」

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