384 サーシャ、困惑

 「おっ?」


 盛り上がっていたケントとミトが、会話を止めた。


 「サーシャが、ラクトをほめた?」


 2人は物珍しそうに、サーシャを見た。


 「……な、なに?なにか、変?」


 視線に困ったサーシャが、2人に言った。


 「いや、なんか、岩石の村のときと、印象変わりましたね、サーシャさん」

 「ああ。なんつ~か、キャラ変わったよな。てか、いまの感じ……」

 「うん、ラクトの……」

 「い、いやだって先に2人も……!」


 サーシャは向かいに座っている、召し使いとニナのほうへと向いた。


 「さ、サーシャさま……」

 「お、お姉さま……」


 召し使いも、ニナも、なぜか小恥ずかしそうに、はにかみながらつぶやいた。2人とも顔が赤らんでいる。


 「な、なんで、あなた達が、赤くなってるの……!」


 2人を見たサーシャもかえって、その淡いピンクの頬を赤く染めた。


 「あ、あなた達が、先にラクトに、言ってたから……!」

 「……」

 「……」

 「いや、なんか、2人が言うのと、サーシャが言うの、ちょっと、雰囲気が違ったっていうかな~」

 「うん、うん」


 ケントが言い、ミトもうなずいた。


 「ち、違わないわ……!」

 「ほぉ~」

 「……んっ?」


 ずっと窓を見ていたラクトが、振り向いた。


 「……」


 みんな、ラクトを見ていた。


 「えっ、なに?」

 「……」

 「あっ、てか、いま、俺になんか言ったか?サーシャ」

 「……」


 サーシャはラクトから目線を反らすと、食事に手を伸ばした。


 「おい、サーシャ?」

 「なんでもないわ」

 「顔赤いぞ?」

 「……」

 「いや~、皆さん。どうも、どうも」


 食事の最初から席を外していたシュミットが、戻ってきた。


 「……んっ?」


 ラクトとサーシャに、無言で好奇的な視線を送る、ケントとミト。


 同じく2人に視線を送る、召し使いとニナ。なぜか、2人とも、恥ずかしそうに顔を赤くしている。


 黙々と食事をする、サーシャ。召し使いとニナ以上に、顔が赤い。


 「とても、独特な雰囲気してますけども……」


 シュミットは、皆を見渡していると、ラクトと視線が合った。


 「あの、ラクトさん?これはいったい?」

 「いや俺もちょっと分からないっていうかなんていうか!」


 とりあえず、テーブル端の空いている席にシュミットは座った。


 「シュミットさん、どちらにいらしたんですか?」

 召し使いが尋ねた。


 「ちょっと、外にですね」

 「あら、一人で外出は危ないのではなくて?」

 「あぁ、いや、ちょっと、玄関前で待っていただけというか……」

 「あぁ、マナトさん達ですか?」

 「まあ、そうですね。それもあるのですが……」


 シュミットはうなずきつつ、言った。


 「ムハド隊長に、私の彫刻を、納品前に、見ていただきたいと思いまして」

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