365 ナジームの解説/ムハド商隊、観戦
「……フッ、なるほどな」
フィオナの戦いを見ていたナジームは、手に持ったサーベルをクルクル回しながら、言った。
「ウテナがいなくても、別に問題ないってか」
「おいナジーム、いまのは?」
隣に座っている、先にステージ上で戦ったナジームサロンの男が、ナジームを小突いた。
「あの銀髪褐色肌の女、何者だ?」
「フィオナ。いまをときめく、ウテナの商隊の隊長だ」
「そうか。あのレイピアの突き……相手は避けられなかったのか?そこまで素早い突きには見えなかったが……」
「見えてないんだよ」
「なんだと?」
「面と向かってみないと、あの恐ろしさは分からないだろうが……死角から攻めているんだ。ダガーを振り抜くことでできる死角範囲を瞬時に判断して攻め込んでいる」
「マジでか」
「洗練された技術と、積み重ねた経験のなせる技だな」
フィオナがステージを降りてゆく先に、フェンの商隊が見えた。
「ウテナはどうやら、いないようだな」
「ああ、そのようだな」
「フィオナは強敵だ。フェン達と当たったら、フィオナは俺が相手をしよう」
ナジームは言い、なおもクルクルとサーベルを回していた。
※ ※ ※
フィオナがステージを降りてゆく方向とは、逆側のほうの客席の一角を陣取って、ムハド商隊はサロン対抗戦を観戦していた。
「おぉ~!!フィオナが勝ったぜぇ!!」
立ち上がり、ケントが叫ぶ。
「やっべすげぇ!!」
ラクトもガッツポーズした。
「フィオナさ~ん!!」
「こっち!!こっち向いて~!!」
ミトとマナトも両手を口に当てたり、手を振ってフィオナに自分達がいることをアピールしていた。
しかし、ステージ全体が歓声に包まれている上、また他の者も立ち上がったり騒いだりしていて、どれだけケント達が大声を出しても、周りにかき消されてしまっていた。
「お~い!!フィオナぁ~!!」
「ダメだぜんぜん気づかねえ~!」
「あぁ~、行っちゃった~!」
フィオナはケント達に気づくことなく、ステージを降りてしまった。
「おう、なんだケント、知り合いか?」
諦めて席に座ったケントに、前に座っていたムハドが言った。
「あっ、そうなんすよ。前にアクス王国に交易に行ったとき、サライから共行した商隊の隊長っすね」
「なるほどな」
ケントにムハドが、その当時のことを話している。
「ウテナさんとルナさんも、いるんじゃない?」
「そうだよね!」
ミトとマナトは立ち上がったまま、ステージの向こう側を見ようとした。
「ん~、ちょっと、ここからだと、見づらい……!」
「だね~」
ステージをはさんでしまうと、頭がかろうじて見えるか見えないかで、確認ができない。
「あっ、誰か上がってきた」
と、一人の、黒い短髪に、褐色肌の男が、ステージに上がってきた。
「……武器、持ってなくない?」
ミトがその男を見て、マナトに言った。
「たしかに」
「素手で戦うのかな?」
「まぁ、それもあるのかも」
ミトとマナトの目の前にいるサロンからも、男が一人、ステージに上がった。その男は、双剣を持っている。
戦いが、始まる。
――ジジジィジジジィィイイ……!
武器を持っていないと思われていた男の手から、水しぶきが起こり、激しく音を立て始めた。
「!?」
「あれは……!!」
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