363 サロン対抗戦②

 もう一名ずつ、ナジームのサロンと、相対するサロンのメンバーが、ステージへと上がる。


 「もうひと勝負だな」

 「ああ」


 ステージから離れている、段差が高めのあたりに腰かけたとあるサロンの男と、その男とは別のサロンの男が2人で話していた。


 ステージ上、対決が始まる。


 「でもまあ、さっきと同じような展開になるだろうなぁ」

 「……あっ、もう、ナジームサロンのヤツが、グイグイ押し始めたぞ」


 ステージ上、男たちが話しているような展開になっている。


 「まあ、そうなるよな」

 「お相手さん、さっきのヤツと同じで双剣だからな」

 「ナジームサロンのメンバーはみんな、サーベルを使う。サーベルは双剣よりも攻撃範囲が広いからなぁ」

 「その分、本来、サーベルは振ったあとの隙が大きいハズなんだけど……」

 「ナジームのサロンメンバーは、サーベルをダガーのように軽々と扱うんだよなぁ」

 「加えて、ナジームサロンの、あの統一された、白装束と深被りのターバン……」

 「表情が分からなくて、やりづらいんだよなぁ」

 「おい、ナジームサロンのヤツ、お相手をステージの端に追い込んだぞ……!」

 「おぉ……!」


 サーベルの一閃が放たれる。


 相手は双剣で防いだが、衝撃でステージから落ちてしまった。


 「勝負あった……!」

 「ああ。ナジームサロンの勝利だ……!」


 周りも、ナジームのサロンに歓声を送る。


 白装束と深く被ったターバン姿のナジームのサロンは皆、無言で自分達の席へと戻った。


 「いやぁ、つええな、ナジームサロン。俺もサーベル、練習しようかなぁ」

 「はは!やめとけ、ダガーとは別物だぜ。重いんだぞ、サーベルは」

 「マジでか。……まあ、いいや。次が、アイーダのサロンか」

 「そして、その次が、アイツらか……!」


 男たちが、ステージから近めのとある席に、視線を注ぐ。


 フェンのサロンが、そこにいた。


 「……んっ?」

 「なんだ?」


 フェンのサロンを見ていた男たちが、首をかしげた。


 「なんか、もめてるんじゃ……?」


     ※     ※     ※


 「ねえ、ウテナは!?ウテナはどこなの~!?」


 ライラが、フェンにすがるように両肩を揺すっていた。


 「ライラ、落ち着いて……!」


 上下に揺すられながら、フェンが言った。


 「ウテナが来れば、落ち着くわよ!」

 「いやだから、それが、いなかったんだよ」

 「なんで!?」

 「それは俺も分からないよ!」

 「なんでよぉぉぉ!!」


 サロン大会前、フェンとフィオナで、ウテナを迎えにいった。


 しかし、ウテナは、不在だったのだ。


 「おい、ライラ。ウテナがいなくたって、大丈夫に決まってるだろ!」


 オルハンが席から立ち上がり、腕組みした。


 「俺が一人で、2人相手してやるぜ!」

 「いやそれルール違反なのよ!2人、必要なのよ!」


 今回のサロン対抗戦は、一戦ごとに、サロン内で2名ずつ選出し、それぞれ、対決しなければならない。


 一勝ずつだった場合は、それぞれの勝者がステージに再度立ち、3戦目を行うことになる。


 勝敗は、ステージから落ちるか。もしくは、血が流れるか。


 「あと一人、誰が出るのよ~!!」

 「ライラ、安心して」


 フィオナが立ち上がった。


 「私が出るわ」


 ――グッ。


 右腰のレイピアを握りしめる。


 そして、ライラにまっすぐな視線を向け、語りかけた。


 「ウテナは私の商隊……責任は、私が取るから」

 「フィオナ……」

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