350 変わりゆく日常①

 「……」


 ウテナは目を丸くして、肉を食べるオルハンを見ていた。


 「……あっ?どした?」

 「あっ、いや。……オルハン先輩って、執着持っているときって、ものすごく執着持ってるじゃないですか。でも、あっさりしているときって、ほんとにあっさりしてますよね」

 「そうか?」


 オルハンは肉を食べ終え、空になった皿を持って、さまざまな料理が並んでいる長テーブルへと向かった。


 「ウフフ。オルハンは、それなりに、聞き分けがよかったりするのよ」


 隣にいたフィオナが、微笑みながら、ウテナへ言った。


 「あれでも一応、隊長だから」


 オルハンが戻ってきた。皿の上にはまた、骨付き肉がドッサリ盛られている。


 と、その肉を、ウテナに差し出した。


 「せっかくなんだから、とりあえず、食えよ」

 「はい……ありがとうございます!」


 ウテナはその肉を、口に運んだ。


     ※     ※     ※


 サロン大会の終わった、帰り道。


 夕日も落ちて、マナのランプが一定の距離に置かれ、ぼんやりと光っている、石の住宅が並ぶ通りを、フェンとフィオナ、ウテナの3人は歩いていた。


 ウテナはジンと遭遇している。


 念のため、ウテナを無事に家まで送るように、フェンとフィオナが同行することにした。ちなみにオルハンには、ライラが同行している。


 「!」


 なにか気配がして、ウテナは立ち止まり、後ろを振り向いた。


 「……」


 ……誰かに、見られている気がする。


 「ウテナ、どうしたの!?」

 「まさか……!?」


 フェンとフィオナも足を止めた。同時に身構える。


 「……」


 ……ジンと、気配が違う。


 自分たちのいるところより、後方の少し遠くのあたりにある、家と家の間の隙間。左手にある、大きな屋敷の窓の中。マナのランプの街頭の、影になっていて見えない暗闇の先……。


 いくつもの視線が、自分に集中しているような、そんな感覚。


 しかし、気配のするほうへと目を向けると、その気配が消えたように、ウテナは感じた。


 「気の、せいかしら……」


 以前、フェンとフィオナは、感覚を研ぎ澄ましながら、周りに注意を払っている。


 「すみません、気のせいみたいです」

 ウテナは2人へ言った。


 「……分かった」


 3人は再び、歩き出した。


 ウテナは、メロの国内に属している、小さな村の出身で、ウテナがキャラバンになったことで、いわゆるメロの中心地域へと出てきて、独り暮らしをしていた。


 「……」


 歩きながら、もう一度、ウテナは後ろを振り向いた。気味の悪い視線はもう、感じなかった。


 「なんだったのかしら……」


 一人、つぶやく。


 やがて、石造りの建物が見えてきた。いくつも部屋のある集合住宅の一室。そこが、ウテナの住居だった。


 そして、その扉の前には、いま、護衛が2人、立っていた。


 「すみません、もう、大丈夫です。ありがとうございました」


 ウテナはフェンとフィオナに礼を言った。


 その時だった。


 ――ザザザ……!


 「!?」


 暗闇から突如として、何人もの人影が現れた。

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