339 キャラバンサロン大会④/階級制度、発表

 「……」


 ウテナはぽかんとして、前を向いていた。


 「やったわね!ウテナちゃん!」

 「僕たちのサロンが、一番だぞ!」


 両隣にいた同じサロンメンバーが、ウテナの肩を揺らし、嬉しそうに叫んだ。


 「えっ、あっ」


 ウテナの目の前にいるフェンが、嬉し涙をぬぐっていた。ライラとフィオナが抱き合って、喜びを爆発させている。オルハンが勝利の叫び声をあげている。


 「……うん!」


 少し気持ちが散漫としていたウテナは、事態を把握するのに少し時間がかかったが、やがて皆と同じように、笑顔になった。


 「サロン代表のぉ、フェン殿ぉ!!ステージへぇ!!」


 司会に促され、フェンがステージへと上がった。同じく、キャラバンを取り仕切る公爵がステージへ。


 ……私たち、1位になったよ。


 フェンが公爵から賞状を受けとるのを見ながら、いまもなお、療養しているルナに向かって、ウテナは心の中でつぶやいた。


 「さぁ~それではぁ!!お次はぁ!!」


 興奮冷めやらぬ中、司会の声が次の式次第を告げた。


 「階級制度の発表だぁ~!!」


 すると、一人の壮年の男が、ステージに上がってきた。


 「キャラバンの皆さま!素晴らしい大会に失礼いたします!アブドでございます!」


 公爵のアブドだった。


 「お帰り、フェン」


 ステージから降りて戻ってきたフェンに、フィオナは言った。


 「見て、アブド公爵よ」

 「だね」


 先まで感極まって泣いていたが、もう、フェンは冷静さを取り戻していた。


 「やっぱり、この制度に、関わってたか」

 「そうね」


 ――おぉ~!!


 周りが歓声で応える。


 「相変わらずの、人気ね」

 「そりゃそうだ。彼が公爵になって、キャラバンのあれこれに介入し出したことで、メロの国でここまで巨大な界隈になったからね」

 「そうよね」

 「もはや、先に賞状を渡してくれた公爵が霞んでしまっている」

 「そうよね。まるでアブド公爵がキャラバンを取りまとめる公爵になってしまっているようだわ」


 アブドはステージに立ったことへの謝意を示したあと、階級制度についての説明をしていた。


 「今後のメロにおける、持続可能なキャラバンの運営のためにも、階級制度を設けることで……」


 と、ステージ上でアブドが長々と話している間に、アブド配下の執事と思われる数人が、ステージを囲んで座っているキャラバンたちのもとへと、徘徊し始めた。


 「こちら……」

 「これを……」


 そして、キャラバンの隊長に、一枚の紙を渡している。


 執事の一人が、フェンのもとへ。


 「こちら、ご確認ください」

 「これは?」


 フェンが聞くと、執事が答えた。


 「こちら、あなた方のサロンの階級を示した書簡になります」


 フェンが、渡された書簡を覗きこむ。同時に、ライラ、フィオナ、オルハンの3人も、覗きこんだ。


   サロン・ド・フェン

    階級 アジーム・アーダ


 「えっとえっと!アジーム・アーダって……!?」


 ライラが食い気味に、その階級がどこに位置するのかを探し始めた。

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