338 キャラバンサロン大会③/交易報酬競争、結果発表

 「皆さまぁ!!本日はぁ!!お集まりぃいただきぃ!!……」


 ステージの上に、司会が立ち、そのよく届く大きな声で、大会開催の宣言を告げた。


 ――わぁ~!!


 ステージの周りの皆も、歓声で返した。


 「それではぁ!!さっそくぅ!!……」


 司会が、とにかく大袈裟に振る舞いながら、式次第を進めている。


 「今回の司会、やたらとテンション高いな」

 「ホント、ちょっと、ウザいくらいね」


 フェンとライラが、若干、引き気味に言った。


 「クソッ、こんなことしている場合じゃねえのに……!」


 オルハンが不機嫌そうに、キョロキョロと、周りに目線を送っていた。


 「この中に、ヤツが潜んでいるかもしれねえのに……!」

 「仕方ないわ。情報は封鎖されているんだもの」


 オルハンの声も、それに応えたフィオナの声も、近くにいるライラやフェンには聞こえているものの、それより外は、周りの喧騒にかき消えていた。


 「……」


 ライラはチラッと、ウテナを見た。


 ウテナは浮かない顔をしている。そして、時おり、オルハンと同じように、キョロキョロと、周りへと目線を送っている。


 「……てゆうか、マジだったのね」


 ライラはオルハンへ言った。その顔は、周りの賑やかで楽観的な喧騒とは対照的で、深刻な表情をしている。


 「ジンが、本当に、メロの国に……」

 「どんなヤツに化けてたの?」

 「それがね……」

 「へっ!黒髪の、いけ好かねえツラしてるヤツだ!」


 ライラに説明しようとしたフィオナに被せるように、オルハンが大声で言った。


 「今度会ったら、俺が勝つ!」

 「いけ好かねえツラって……それ、アンタの私見でしょ」


 フィオナは苦笑した。


 「黒髪……」


 ライラは、昨日のことを思い出していた。ジンについて、不思議な問いかけをしてきた、黒髪、黒い瞳の青年、マナト。


 ……でも、いけ好かねえツラって訳じゃ、ないわよね。


 「ねえ、オルハン、ちなみに瞳の色って……」

 「続きましてぇ!!」


 司会の声が、響いている。


 「皆さんお待ちかねぇ!!交易報酬競争、結果発表ぅ~!!」

 「!」


 フェン達が、ようやく、ステージに目線を注いだ。


 「始まったな……!」


 この時ばかりは、フェン達も、ステージを凝視していた。


 「10位ぃ!!サロン・ド・…!!」


 順番に、サロンの名前があげられてゆく。


 名前があげられる度、そのサロンであろう、所々で歓声があがっていた。


 「3位ぃ!!サロン・ド・ナジームぅ!!2位ぃ!!サロン・ド・アイーダぁ!!」


 ――ぉおお~!?


 所々で聞こえる歓声とともに、どこからともなく、なにかを期待するような声があがって、だんだんと、それが大きくなってゆく。


 「1位ぃ!!サロン・ド・フェ~ン!!」


 ――っしゃぁあああ!!!


 オルハンの絶叫と、周りの声が一体化して、まるで巨大なエネルギーが爆発したような歓声がテント内に響き渡った。

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