337 キャラバンサロン大会②

 フェンを先頭にして、ライラ、オルハン、フィオナといった隊長陣が続々と一列に並んで、テント内に入ってきた。


 それを見ながら、男2人は話していた。


 「あの一番前にいるのが、サロンのリーダー、フェンだ」

 「黒髪のヤツか」

 「的確な判断力に定評があって、自然、皆を取りまとめるリーダーとなったようだな。双剣の腕前もなかなかのものだ」

 「その後ろの赤茶髪の、背の高い、ちょっと目つきの悪い女は?」

 「ライラだ。かなり鋭い三白眼をしているが、実際は気さくな性格らしい」

 「マジか。俺、目つき悪い女の人、結構好きなんだよな」


 隊長たちの後続には、サロンに所属するキャラバンたち続いて、テント内に入ってきていた。


 「……なんか、隊長陣、笑顔がないな」

 「緊張しているんじゃないか?視線がもう、一斉に集まっているからな」

 「なるほど。……てか、あの、銀色の髪の女、エロくね?すげえ露出度高いな」

 「フィオナだな。基本的にあの姿だ。あの噂に名高い、ウテナの隊の隊長だ」

 「へぇ。それで、その女性陣の間に挟まれている、ちょっと殺気だってる感じの男は?」

 「オルハンだ……!」

 「あっ、アイツがか!」


 フェンや隊長たちは空いている席を探しているのか、ステージ全体を見回している。


 「オルハン……そいつの名は俺も知ってる。マナの神殿での、人魚の洗礼を突破して、能力者になったことで有名なヤツだろ?」

 「ああ、そうだ。クルールのマナ……すなわち、水を自在に操る能力を得ている。ウテナの人気の影に隠れているが、あのオルハンという男も、サロン内で注目されている一人だな」

 「てか、なんでアイツ、あんなに殺気だってるんだ?」

 「周りを威嚇するように、にらみつけてる……」

 「まっ、いいや。それで、そんなオルハンていう男すらも、影にしてしまう、ウテナってのは……」


 ――おぉ~!!


 その時、にわかにテント内がざわつき出した。


 「いま、入ってきたぞ!ウテナだ!」


 サロンのキャラバンたちに混じって、ウテナがテント内に入っていた。


 肩あたりまで伸びた黒髪は、後ろで束ねられていて、馬の尻尾のように、歩くたびに揺れている。切れ長の赤茶色の瞳、引き締まった細身からは、どこか、緊張した雰囲気を思わせるものがあった。


 「あれか!……思ったより、華奢だな」

 「だがその逸話は、ワイルドグリフィン防衛戦以来、どんどん増えていく一方だ。交易中に遭遇したグリズリーを、一撃で倒しとか、一人で盗賊十人以上を相手に、指一本触れさせなかったとか……」

 「いや強すぎだろ……それ、ホントなのかよ」

 「いや、いま言ったのですら、過小評価とする意見もあるくらいらしいぜ。噂では、ジンとも互角にやりあえる力を持ってるとか」

 「どんだけよ……」


 男たちが話している間に、フェンのサロンは、ステージ前方の空いていた席を見つけ、腰かけていた。


 「……あれ?」

 「どうした?」

 「いや、もう一人、いるんだよ。注目されているのが。公爵令嬢の娘が、サロンに所属してるハズなんだが」

 「へぇ」

 「今回は、参加してないみたいだな」

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