336 キャラバンサロン大会①
セラとジェラードがメロの国を去った、次の日の、午後。
巨木が点在するエリアの中に、土色の、三角錐のテントが建てられていた。
そのテントは別名、キャラバンテントと呼ばれ、メロのキャラバンたちが交易のさなか、野宿を余儀なくされたときに砂漠の上に即興でこしらえ、利用するものだった。
しかし、いま、巨木エリアに建っているテントのその大きさは、普段メロのキャラバンたちが使用しているような、ラクダに積めるほどの大きさとは、比べものにならないほどに大きかった。
周りに立つ巨木が、小さく見えた。
その巨大なテントの中に、続々と集まる、メロの国のキャラバンたち。
それぞれ独自に運営しているサロンが、この日は一同に集結し、盛大にサロン大会が催されることになっていた。
サロン大会は昔からあったが、最近のキャラバン人口増加によって、その規模は回を重ねるごとに、大きくなっていった。
その規模は、もはやメロ最大の建物である宮殿ですらも凌駕するものになってしまっていた。
そんな巨大キャラバンテントの内部は、ステージが真ん中に設けられ、周りはステージから離れるに従って徐々に段差が高くなるようなつくりになっている。
テントの上からは、マナのランプがいくつもぶら下がり、さながらシャンデリアのように、オレンジ色の光で、テント内部をくまなく照らしている。
そんなテント内ではすでに、多くのサロンが集結していて、ガヤガヤと賑やかになっていた。
「おい……おい!」
後ろの、段差が高めのあたりに腰かけた、とあるサロンの男が、別のサロン所属の、隣に座っている男に話しかけた。
「お~い!聞こえてねえのか!?」
「えっ?あっ、なんだ、お前か。久しぶりだな」
ようやく男は気づいた。
テント内、あまりの騒がしさのせいで、隣に話しかけるにも、顔を近づけないと声が届かない。
触れるか触れないかの距離で、男は尋ねた。
「みんなが注目してるっていう、噂のフェンのサロンって、どこにいるんだよ?」
「なんだ、お前、見たことないのか」
「俺の拠点はこっち側じゃないから、実際にどんなヤツらか、見たことがないんだよ」
「ん~。……いや、まだ来てないようだな」
「今回のサロン同士の報酬競争の、優勝候補らしいじゃねえか」
「ああ。なんといっても、ウテナって女子の活躍が……」
――おぉ~!!
男たちが話していると、どよめきが起こった。
「どうした?」
「噂をすればなんとやらだ。見ろよ、フェンのサロンだぜ」
「マジで」
男が指差すほうを見ると、テントの入り口のほうから、一集団が入ってくるのが見えた。
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