326 サロンの階級制度

 「サロンの代表者会議、終わったの?」


 フィオナが聞くと、フェンはうなずいた。


 「ああ。まさに、いま2人が話していたような内容だったよ。……俺も、いただこうかな」


 フェンは店のカウンターのほうへ向かった。


 「……んあぁ!やっぱり、私もぉ!」


 我慢できない様子で、ライラも席を立って、フェンの後ろに並んだ。


 2人が、飲み物を購入して、戻ってくると、それぞれイスに座った。


 「んふふ~」

 「まったくもう、ライラったら……」


 嬉しそうににんまりしているライラの顔を見たフィオナが、あきれた顔をした。


 「知らないわよ?太っても」

 「だ~いじょ~ぶ!交易で運動するじゃん!」

 「調子いいんだから、もう……。まあ、いいわ。フェン、それで?」


 フィオナは購入した飲み物を飲むフェンを見た。


 「代表者会議で、どんな打ち出しがあったの?」

 「ゴク……ああ、もちろん、話そうと思うんだけど……オルハンは?」

 「そういえば、来てないわね」


 フィオナとライラは顔を見合わせた。


 一応、今日はここ飲み物屋に集合して、隊長達だけで打ち合わせる予定だった。


 「なんか、聞いてる?ライラ」

 「いやいや、聞いてるわけないでしょ」

 「……まあ、オルハンには、後で伝えればいいか」


 フェンは言うと、改まった様子で話し始めた。


 「サロンに、階級制度を設けるそうだ」

 「階級制度?」

 「さっき、深手を負ったキャラバンが、台車に担がれて通り抜けたと思うけど」

 「ええ」

 「見た見た」

 「あれはアクス王国から帰還中、西のサライとメロの間の砂漠で、武器狩りの盗賊に襲われてしまったらしいんだ。そして、キャラバンになって間もないメンバーでもあった」

 「へぇ、武器狩りの盗賊ねぇ」

 「たしかに、それだと、ルーキー君は厳しいわね。武器狩りの盗賊は、他の盗賊に比べて強いし……」


 ライラとフィオナがそれぞれ言うと、フェンはうなずきつつ、言葉を次いだ。


 「これまでも、キャラバンサロンは組織として機能していたし、サロン同士で競い合う関係性が出来上がってはいたんだけど、さらに明確に、階級制度を設けることにするというのが、今回の会議で決まったことだよ」

 「なるほどね」


 フィオナはフェンに言った。


 「サライを経由する遠方の交易とか、高価値で盗賊に襲われやすい危険な交易とかは、上の階級のサロンに所属するキャラバン達が行って、下の階級のサロンには任せないようにするってことね」

 「そういうことだね」

 「ちなみにさ……」


 すると、ライラが、オルハンの真似を織り交ぜながら、言った。


 「ここでオルハンがいたら、じゃあ、俺たちのサロンはどの階級なんだよ!って、いいそうなヤツね」

 「あぁ~、言いそうね」

 「はは……だと思う」


 フィオナとフェンも、ライラに同調した。

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