315 激闘①/ジン・シェイプオブ・マナト

 ――チャキッ。


 ジンが、右腰につけているダガーを引き抜いた。


 ――ガギギギッ!!


 ウォーターアックスの水圧の刃と、ダガーの刃が金切り音をあげる。


 「ぅらあ!!」


 オルハンが全力で両手を振り抜いた。


 ウォーターアックスに力が伝わる。波打つようにウォーターアックスは激しくしなりながら、その力はどんどん増長していき、刃先へ。


 ――ジジジジ……!!


 「おぉ……!」


 ジンのダガーによる受け止めをオルハンの力が加わったウォーターアックスが上回った。


 「へっ!距離があるだけ、この力は伝わんだよ!」


 ウォーターアックスの力に耐えきれず、ジンは横向きに吹き飛んだ。


 「強い……!」


 オルハンの後ろで戦いを見ていたウテナは驚いた。ジンが弱いというより、水の能力を有したオルハン自体が、強い。


 「オルハン先輩、すごいです!」


 ウテナは感動して、オルハンに言った。


 「へっ!ジンだろうがなんだろうが、勝てばいいんだよ!勝てば!」


 ――クルッ。


 しかし、ジンは空中で受け身を取り、なんのことなしに地面に着地した。


 「強いんですね、お兄さん」


 ジンが言った。


 「マナも取り込んでいるし、これは、なかなか厄介なようだ」


 言葉とは裏腹に、星の光に照らされた、ジン……マナトの顔は至極、穏やかなニコニコ笑顔だった。


 「こっちは、ダガーしかありませんし、接近戦に持ち込むしかないですねぇ……」


 ――スッ。


 笑顔のまま、ジンは腰を低くした。右手に握られたダガーが、怪しく光る。


 「それじゃ、今度は、こちらから……!」


 ――タタッ!


 ジンがオルハンに向かって、駆け出した。


 「へっ!返り討ちにしてやる!」


 ウォーターアックスを構え、ジンの攻撃を迎え撃つ体制を取った。


 オルハンに接触する手前で、ジンが姿勢を、グッと低くした。


 「むっ!」


 ――ヒュン!


 ジンが跳躍。その勢いで、ダガーをオルハン顔に向かって突き上げた。


 ――ガッ!!


 オルハンのウォーターアックスが、ジンのダガーを受け止める。


 ――ギギギ……!!


 「おらっ!!」


 ダガーとウォーターアックスが金切り音をあげる中、オルハンはジンに向かって蹴りを入れた。


 ――ギンッ!


 両手でダガーを振り抜き、ウォーターアックスを押し出すことで、ジンはオルハンから離れ、蹴りを回避。


 「むっ!?」


 回避してからの、ジンの動きが、速い。


 ――タッ!


 まるで足にバネがついているように、オルハンの体制が整うよりも早く、再度ジンが切りにかかる。


 「マジかよ……!」


 ――ヒュッ!


 「くっ!」


 オルハンは身体をひねらせて、ダガーの攻撃を回避した。


 ジンの動きが、さらに速くなる。


 「なにっ!?」


 一瞬前までダガーを振り抜いていたにも関わらず、角度を変えて切り返し、ダガーの刃はオルハンのほうを向いている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る