289 武器狩りの盗賊との戦い④

 「相手はダガーだ!射程が短い!!」

 「突き殺せ!」

 「串刺しだ!!」


 ――シュッ!


 その長さを活かして、盗賊達はラクトとサーシャに向かって四方から長剣を突き立ててくる。


 「はっ!遅いぜ!!」


 盗賊の中の一人に狙いを定めると、逆にラクトのほうから長剣の先端に向かって飛び出した。


 「なっ!自分から刺されに!?

 「んな訳ねえだろ!!」


 ラクトがクルっと横向きに回転。


 長剣とラクトが交差したと思った時には、もうラクトは、回し蹴りのモーションに入っていた。


 「な、なんなんだ……コイ……!」


 ――ドッ!!


 「がぁ……!」


 ラクトの回し蹴りが盗賊の脇腹に直撃。相手は衝撃で吹き飛んだ。


 ――キィン!!


 「んっ?」


 ラクトは剣の弾かれる音がしたほうに振り向いた。


 見ると、サーシャが一人の盗賊の長剣を、ダガーで弾き飛ばしていた。長剣が、クルクル回転しながら空を舞っている。


 ――ドスッ!


 サーシャが、長剣を失った盗賊の溝落ちあたりに、ダガーの柄の部分を打ち込んでいた。


 「ぅぐ……」


 苦しみで顔を歪ませた相手が、膝を着いた。


 「……これで、いいのかしら?」


 サーシャがラクトのほうを見ると、言った。


 「おう。なかなか、いいと思うぜ」

 ラクトは笑顔で返事した。


 「今だ!!」

 「殺せ!!」


 背後から、3人の盗賊がサーシャへ長剣を伸ばしてきた。


 ――ザッ!!

 ラクトが地面を蹴る。


 「……」

 サーシャも無言で振り返った。


 一瞬でトップスピードになったラクトが、3人の盗賊を捉える。それに呼応するように、サーシャが両手でダガーを構えた。


 ――カキキキィイン!!


 「そ、そんな……」


 サーシャとラクトのダガーが上下で綺麗な銀色の弧を描いたと思うと、盗賊3人の長剣を悉く弾き飛ばした。


 「遅い!かつてのマナトより遅いぜ!!」


 ラクトが叫んだ。


 ……うんっ?


 なんとなく自分の名前が聞こえた気がして、マナトはラクト達のほうへと振り向いた。


 見ると、2人の盗賊が倒れている上、残りの3人も長剣を失って、完全に決着が着いているように見える。


 ――ブヨヨヨヨォォオオン。


 マナトの目の前に浮かんでいる、マナト以上の大きさの、巨大な水玉が揺れた。


 「んっ、また、ボウガンの矢が」


 盗賊達の放った矢が、水玉の中に入る。飛んできたボウガンの矢は水の中で勢いが殺され、そのまま水の中を漂っていた。


 マナトは、戦いが始まってから、ずっとそうして、飛んでくるボウガンを水玉で受けていた。マナトのいる位置の奥にはラクダ達がいて、ボウガンの流れ弾が当たらないよう、水玉の障壁で守っていた。


 「……最近、こういった役回り、多いなぁ」


 戦闘が激化してゆく中、むしろのほほんとしながら、マナトは水玉越しに、前線の戦闘を眺めていた。

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