288 武器狩りの盗賊との戦い③

 「えっ!?」

 「相手の心が!?」


 ……そういえば。


 ミトとラクトが驚く中、マナトは心の中で思っていた。


 かつて、キャラバンの村で会ったときも、ムハドはそれとなく、マナトが考えていたことを、言い当てていたような。


 そして、先のムハドと盗賊の頭との会話。


 ……間違いない。やはりリートさんが言うように、ムハドさんは、それができる人なんだ。


 「リートさん、それってつまり……」

 「いつまで話してやがる!!」

 「!」


 マナトの言葉を遮り、手に長剣を持った盗賊達が一丸となって、前線にいる商隊の皆へと切りかかってきた。


 「死ね!女ぁ!!」


 サーシャに向かって盗賊の一人が跳躍。その首元へと切っ先を繰り出す。


 「……」


 サーシャは無言で、腰につけていたダガーを引き抜いた。そのまま、盗賊の長剣の刃に滑らせた。


 「なに!?」


 長剣が受け流され、盗賊は体制を崩した。


 「……」


 サーシャの琥珀色の、殺意の滲んだ瞳が近づいたかと思うと、ダガーは、もうすでに盗賊の首元まで迫っていた。


 「こ、この女、つよ……!」


 盗賊の首元に、サーシャのダガーが突き刺さる瞬間、


 ――ドッ!!


 「ぅがッ!?」


 盗賊が、豪快に飛ぶ。


 「へっ!眠ってな!」


 ラクトが蹴り飛ばしていた。


 「……ジャマ、した?」


 サーシャがラクトに言った。


 「まあな」

 「……なぜ?」

 「よくないこと、しようとしたからな」

 「……」


 ラクトは、蹴り飛ばした盗賊を見た。倒れて、気を失っているようだ。


 「見事なダガーさばきだな、ミトのようだったぜ」

 「……長い剣より、こっちのほうが、使いやすい」

 「短いけど、軽くて扱いやすいから、ちょうどいいのかもな」

 「……うん」


 サーシャがうなずいた。


 そんなふうに話しているラクトとサーシャの周りを、5人の盗賊達が取り囲む。


 ラクトとサーシャは背中合わせになって、盗賊達を迎え撃つ体制を取った。


 「一応、言っておくぜ」


 ラクトが、背後で盗賊達を睨むサーシャに言った。


 「キャラバンは、できる限り、人間を殺しはしないんだ」

 「……向こうが殺しに来ていても?」

 「ああ、そうだ」

 「……」

 「俺たちの目的は交易だ。殺すことで恨みを買われることを、キャラバンはよしとしないだけだ」

 「……そう」

 「それに、それだけ余裕を持って戦えるだけの訓練を、俺たちは積んでる。そして、お前も、な」

 「……別に私は、訓練なんて、してないけど」

 「だよな。それであの動きって、アンタ、やっぱ強すぎ。てかアレだろ?俺がいなくても、一人で、ここの5人なんて、ぶっちゃけ十分だろ?」

 「……冗談のつもり?」

 「ははは!」


 ――ザザザッ!


 「やっちまえ!!」


 ラクトが笑った瞬間、取り囲む5人の盗賊達が動き出した。

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