287 武器狩りの盗賊との戦い②
「逃がすか!!」
後方にいた盗賊の一人が、ボウガンを構えた。背中を向けて走り去るムハドに狙いを定める。
――ヒュゥゥ!
ボウガンから矢が放たれた。ムハドの背中目がけて飛んでゆく。
「!」
ケントが跳躍していた。
ムハドの前に立ちはだかっって大剣を抜き、大剣を横向きにして、刀身部分でボウガンの矢を受ける。
――クァンッ!!
矢は刀身に当たって弾かれて、ザクッと砂に刺さった。
「あぁ、行っちゃった……」
唖然として、ミトとラクト、マナトはただ、どんどん小さくなってゆくムハドを眺めていた。
「い、いや!きっと、ムハドさんは、後方ですげえ力を溜めて……」
「フフっ、ラクトくん、違うっすよ」
リートが、苦笑しながら、3人のほうを振り向いた。
――ヒュゥゥ!
「おっと!」
ボウガンの矢が、リートのほうにも飛んで来ていた。
「一人、おそらくアタマのヤツが逃げたぞ!!」
「早々に逃げやがった!あんなヤツの手下に、負けるか!!」
盗賊達がムハドを差して罵り、改めて一斉に攻撃を仕掛けてきていた。
「ムハドは……」
矢をかわしながら、リートはミト、ラクト、マナトに話した。
「キャラバンの村で行われている、最終試験を突破してないんすよ」
「えっ!?」
3人も盗賊から放たれるボウガンの矢をかわしつつ、リートの話を聞いて驚いている。
「といっても、当時は最終試験の制度もなかったみたいっすけどね」
……あっ、でも、確かに。
ムハドはかつて、勝手にキャラバンについていったとかどうとか、いつかの時に村で聞いたのを、マナトは思い出した。
「だから、ムハドは基本、戦わないんす。ムハドって、見た感じ、そこそこ筋肉あって、引き締まった身体って感じなんすけど……」
言いながら、リートは砂に刺さっているボウガンの矢を掴んだ。
「信じられないくらい、弱いんで」
「そんな……」
リートの言葉を聞き、ミトとマナトは、明らかに、失望の表情を顔に浮かべていた。
「ままま、そんなにガッカリしないで」
――ブンッ!
リートが、ボウガンを放った相手に、矢を投げ返した。
だが、素手で投げた矢は速度も遅い。一応、なんとか届くかといったところだ。
「やっぱり、ジャン君みたいなの、無理っすねぇ」
「はっ!なんだそのヒョロヒョロな矢は!」
――パシッ!
ボウガンを持った盗賊は、リートの投げた矢を掴み返した。
「……フッ」
リートが目を細めた。赤い瞳が、キラリと輝く。
――ボボボボッ!
「!?」
そのボウガンの矢から、炎があがった。
「うわっ!!ひ、火が!?」
そして、盗賊の身体に炎がつたう。
「ムハドは……」
リートは、火が燃え移って慌てる盗賊をまったく気にすることなく、3人に言った。
「その商才だけで、キャラバンの村で頂点に立った男なんすよ」
「しょ、商才だけで……?」
「そうっす。なんていうんすかね……ムハドは、相手の心が読めるんすよ」
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