257 戦闘③/ロアスパインリザード

 「ちょっと待ってください……こんな戦い、護衛達には荷が重すぎるんじゃ……!」


 シュミットが気づいて、護衛隊のほうに目線を向ける。


 ニナはすでにそちらを見ていた。


 「マナトお兄ちゃん!護衛隊のみんなが……!」

 「!?」


 マナトもとっさに護衛隊のほうを見た。


 馬車を囲うように守っている護衛隊に、ロアスパインリザードが飛びかかっていた。


 ――シュ~!!


 前肢でなぎ払いを放つ。


 「クソッ!!」


 狙われた護衛の一人は避けきれない。


 ――ギンッ!!


 長剣で鉤爪を防いだものの、ロアスパインリザードの力のほうが、圧倒的に護衛を上回っていた。


 「ぐあっ!!」


 護衛の身体が宙を舞う。


 「くっ!いま助けに……」


 マナトが左手をかざし始めたその時、


 ――ヒュゥ!


 「マナト!鱗が飛んでくるよ!!」

 ミトが叫んだ。


 「!」


 ――シュルルル……!


 「うわっ!!」

 「キャァ!!」

 シュミットとニナが反射的に目を閉じた。


 「……えっ?」


 ニナが、ゆっくりと目を開けた。


 目の前にマナトが立ちはだかり、両手をかざしている。


 ――ブヨヨ……。


 ゼリー状の水の膜が張られ、散弾銃のように飛んで来た流れ弾ならぬ、流れ鱗を、その水の膜が受け止めていた。


 ――ザパァ……!


 水の膜が落ち、砂漠に染み込むと同時に、勢いの殺された鱗も一緒に落ちる。


 「こ、これが、マナトさんの能力……!」


 目を開けたシュミットが、目の前で水を操るマナトを見て言った。


 「マナト!大丈夫か!?」


 ラクトが、敵から目線はそらさずに大声で言った。


 「うん!大丈夫!」


 マナトは答えつつも、言った。


 「でも、あの鱗がある限り、ここから動けない。護衛隊の援護にいけない……!」


 ――カキキキン!


 ミトもラクダのほうに飛んでくる流れ鱗を、ダガーで次々と弾き返している。


 「ミトも厳しいな……あぁ!」


 ――ドサッ!ゴロゴロ……!


 ロアスパインリザードの前肢の衝撃で吹っ飛んだ護衛の一人が、地面に転がる。


 「……ぐぅ」


 なんとか立ち上がろうとするが、痛みからか、なかなか立ち上がることがなかなかできていない。


 ――シュ~!!


 ロアスパインリザードが、手負いの護衛一人に狙いを定めた。


 「おのれぇ!!」

 「このヤロ!!」


 別の護衛の者達が前に出て、進路を防ぐ。


 ――シュァ~!!


 ロアスパインリザードは止まらない。


 尻尾を振り回してなぎ払う。


 ――バチン!!


 「ぐぅ……!」

 「ぬぁ……!」


 進路を防いだ護衛の者達が尻尾の直撃をくらった。


 護衛が次々と突き飛ばされ、加えて背中や肩に鱗が突き刺さる。


 そして、起き上がれない護衛に迫る。


 「まずい!護衛の人!逃げて!!」


 ――サッ!


 マナトの目の前を、何者かが通りすぎた。


 「一体ヤッといたっす!あとよろしく!!」

 「リートさん!?えっ!?」


 マナトはリートが走ってきた方向を見た。


 「!」


 目線の先には、丸焦げて絶命したロアスパインリザード。


 ……さすが、リートさん!!

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