248 岩石の村からの依頼②/交易会議の後で

 「えっ、ちょっと、どういうこと?」


 ステラは解せぬといった顔をしながら、リートを見た。


 「それって、運搬依頼なんですか?」

 「まあ、運搬依頼といえば、運搬依頼じゃないっすかね。彫刻と絵画を運ぶっていう」

 「いや、でも本人達も行くんですよね。それって、こっちは、ただの護衛じゃないですか?」

 「……たしかにそっすね」


 ステラとリートの会話を聞くと、長老も苦笑しながら言った。


 「護衛もついて行くのなら、別にわしらに頼む必要はないのではないかの……でもまあ、ええわい。ステラ」

 「はい」

 「承知と、返書を」

 「……えっ?いいんですか?」


 すると長老は、ここ見てみろ、と言わんばかりに、依頼の紙のとある場所を指差した。


 「……えっ!?」

 「とんでもない額っすね……」


 そこには、今回の報酬額が記されていて、確実に、他の村どころか、裕福な国が出す額よりも高かった。


 ……さっすが、サーシャさん。

 マナトは心の中でつぶやいた。


 「さ~て、残るは、ラクダじゃな」


 仕切り直して、長老は言った。


 「ある程度、わしの中では固まった来たが、いかんせん、メロの国の公爵がなにを考えているか……」

 「じいちゃん」


 廊下のほうから、声がした。


 「んっ?」


 ムハドが、腕を組んで、居間の出入り口の扉にもたれかかりながら立っていた。


 「あらっ、ムハドさん!」

 「よう、ステラ」

 「こんにちは、ムハドさん」

 「おう、マナトか」


 それぞれに、ムハドは挨拶した。また、リートとは、アイコンタクトを交わす。


 長老へと向かって、ムハドは言った。


 「途中から、話は聞いてた。俺、行くよ。たぶん、俺が行けば、いいんじゃないか?そういうことだろ?」

 「……まったく、仕方ないのう」


     ※     ※     ※


 数日後。


 ――ギイィィィィ。


 大衆酒場の大扉が開き、中で交易会議をしていた者達が続々と出てきた。


 外に出てきた者達の声が聞こえてくる。


 「いや~、今日は長かったな!」

 「ラクダを何頭、メロの国に送るかで、最後の最後まで議論が分かれたからな~」

 「最終的に、メロの国が希望していた100頭の半分、50頭に落ち着いたか」

 「あと、岩石の村の依頼のこと、報告程度に言われたけど、分かった?」

 「いや、イマイチ分からなかった。一応、運搬依頼ってことなんじゃね?」


 皆、どこか高揚した様子で、口々に話しながら、それぞれの場所へと散ってゆく。


 「しかし、今回の一番の目玉は、そこじゃないよな」

 「キャラバンの王、ムハド大隊長の交易復帰。これには酒場内、沸いたよな」

 「まあ、メロの国だからクルール地方内だけど、復帰後初戦っていう意味では、ちょうどいいんじゃないか?」

 「いよいよ、長老も、懐に忍ばせていた、純金のダガーを出してきたってところだな」

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