150 戦闘③/デザートランスコーピオン

 ――ズブブッ。


 砂煙から放り出されたその化け物、デザートランスコーピオンは、勢いよく地面へと横向きに落ち、片方の脚が2本、砂に埋まってしまった。


 「よし!トドメ……!」


 近くにいたラクトが一瞬で間を詰めてダガーで斬りにかかる。


 ――ブンッ!!


 「ぬぉっ!?」


 横向きで体制を崩しているまま、デザートランスコーピオンはその長く先が鋭い毒針の尾を振り回した。


 「あっぶね……!」


 思わぬ敵の攻撃に、ラクトが後退した。


 ――サササッ……スゥ。


 態勢を建て直すように、その長い巨体を一度後退させると、後ろ脚4本で自らの肢体を支えながら、S字にくびれて雄々しく立ち上がった。


 「おぉ……!」


 ひし形の、紫色の両の眼が光り、灰色の装甲を身にまとい、2対の凶悪な鋏脚を持ち、毒針の、槍のような尾は横から近づくもの全てを刺す機を伺い、その立ち姿はサソリというより近未来の生物兵器のようだ。


 「かっ……かっこいい!」


 ――シュッ!!


 デザートランスコーピオンの立ち姿を見て、思わず男心をくすぐられているラクトに毒針が飛ぶ。


 「毒だけ気を付けて!麻痺して動けなくなるっすよ!」


 リートがラクトに言った。


 「大丈夫っすよ!」


 毒針の動きを見切り、回避しながらラクトは言った。


 「これくらいならよけれます!それに、麻痺くらいなら、ちょっとくらい!」

 「そんで、砂の中に引きずりこまれて、その新鮮な体液をチューチュー吸われちまうっす」

 「うげぇ!」


 リートの言葉を聞いたラクトは後退した。


 「そっ、それだけはイヤだぁ……!」

 「ラクト!挟み撃ちでいこう!」


 ミトとラクトが両サイドに回り込む。


 ――シュシュッ!!


 「あぁ!やっぱ俺に毒針がぁ……!!」


 ラクト毒針が連続で襲いかかるのを、間一髪でよける。


 「今だ!!」


 ――ヒュッ!


 デザートランスコーピオンがラクトに気を取られている間、ミトが瞬時に懐に入り込んだ。


 ――キィン!


 「やっぱり、硬いね……!」


 一撃を加えたが、鉄の鎧のような灰色の甲殻にミトのダガーが跳ね返される。


 「ミト!甲殻と甲殻の間の、関節部分を狙うんだ!」

 砂煙の中から出てきたケントが言った。


 ――ジャキッ!!


 鋏脚がミトに襲いかかる。


 「!!」


 ミトは大きく身体を仰け反らして、上スレスレのところで鋏脚の一撃をかわした。


 ――ガッ!!


 鋏脚の関節、すなわち可動脚部分に、ミトはダガーを引っ掻けた。


 「おっっりゃぁぁあああ!!!」


 ――ズァァアアン!!!!


 下から思いっきり体重をかけたミトの一撃で、デザートランスコーピオンの右鋏脚の、可動脚部分を切り落とした。


 「ミトナイッスゥゥ!!」

 ラクトが言った。


 一旦、ミトもラクトも下がる。


 「フゥ」

 ミトが、息を吐いた。

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