67 死闘④/ジン=マリード

 ジンはミトを見ながら、ちょっと考える素振りをした。


 「う~ん……あ~!」


 やがて、何かに気づいたように、ミトに聞いた。


 「そっかぁ~!もしかして、君、なんかあったのかなぁ~?」

 「うあああああああ!!!!!」


 叫びと共にミトは跳躍した。


 すれ違いざまに2撃、だが、ジンは素早く回避し、ミトの持つダガーは空を切る。


 そしてジンの手が、ミトのダガーを持つ手を掴みにかかろうとする。


 ――ヒュッ!!


 ジンが手を引いた。ミトはその手を読んで素早く腕を引いてさらに一閃を加えていた。


 「かわいそうに~」


 ジンは、どこか同情を含んだような、それが逆に、相手を逆なですることを分かってもいるような感じで、嫌らしくささやいた。


 「もしかして、大切な誰か、殺されちゃったのかなぁ~?それとも、さらわれちゃったのかなぁ~?」

 「黙れぇぇええ!!!!」


 稲妻のようなミトの五月雨切りがジンに降り注ぐ。剣筋が速すぎて、まるで筆で殴り書きをしているかのように残像を残し、息をつかせることのない連続攻撃を叩き込んだ。


 ――キンキンキン……!!


 だが、ジンはそれを、包丁でことごとく防ぎ、


 ――ドス!!


 一瞬の隙、まさに糸を針で通すようなほんの一瞬の隙をついて、ジンはミトの腹に正拳突きを打ち込んだ。


 「ヴッ!」


 ミトは苦悶の表情を浮かべ、地に伏した。


 ――ピュンピュンピュン!


 「おっと~!」


 マナトの不意打ちテッポウウオを、ジンはステップを踏みながらよける。


 ……次は、外さない!!


 すかさずマナトは水柱を放つ体制。


 と、ジンは人差し指を立てた。


 ――ポッ。


 小さな、ロウソクサイズほどの火が、人差し指の上に灯った。


 「火の、能力……!」


 危ない予感がしたマナトはテッポウウオを解き、両手をかざした。水流は両手のすぐ手前に集まり、大きい水玉となる。


 「いやまあ、マリードだから、全部使えるんだけどね~、あえての火だよ〜!」


 ジンは人差し指を口元へ近づけた。


 ……来る!!


 「ラクト!後ろに隠れて!!」


 ジンが火に息を吹きかけた瞬間、


 ――ボワァアアア!!!


 人差し指の上の火が、巨大な炎の風となってマナトとラクトを一瞬で包み込んだ。


 「マナト!!ラクト!!」

 倒れているミトが悲鳴をあげた。


 ――シュ〜!!


 次の瞬間、辺りが、真っ白な煙で包まれた。


 ――シュ~。


 「ハァ、ハァ……」


 火と水は水蒸気となって消え失せ、白煙の中から、両手をかざし、腕と顔に少し火傷を負ったマナトと、すぐ後ろで唖然とするラクトが、浮かび上がってきた。


 「2人とも大丈夫!?」

 「大丈夫。だけど……」


 マナトは水壷を持って、逆さにして振った。


 「火を食い止めるために、全ての水を使っちゃった」

 「なっ……」


 ……ジン、これほどにも、強いのか……!!

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