65 死闘②/ジン=マリード
マナトの水壷から流れ出た水流は地面を這うようにミトとラクトへと向かい、2人の背後へ回り込んでいた。
「た、助かった……!」
「サンキュー!マナト!」
「……ほ〜う?」
ジンはマナトに目線を向けた。
「マナの力を得た能力者か〜」
――シュルシュル……。
水流が、マナトの右手に集まる。左手で下から包み込み、テッポウウオの構えをとる。
足に力を入れた。
……最初から、口は全開!!
――ドドドドォォォ!!
マナトの両手から、
「ほ〜い!」
ジンは跳躍し、水柱を回避。
マナトは左手を解くと、人差し指と中指をかざした。
……回り込んで、背後から!さっきより、速く!!
――グイィィィイイイン。
マナトの2本の指に導かれるように、水柱は大きく旋回。再びジンを狙った。
「おぉ!すげえ!」
「マナト、そんなことまで……!」
ラクトとミトも、感動しながらマナトの水柱に見入った。
「おっと~!」
ジンはバク転した。体格からは想像できない素早さだった。その間をスピードに乗った水柱が通り過ぎる。
――バシャアァァァ!!!
水柱は地面に当たり、勢いが殺されて離散した。
「大したもんだね君~!その若さで、そこまでマナの力を自在に操ることができるなんて~!でもまあ、操れるのは、どうやら水だけみたいだけどね~」
「……」
マナトは手を解いた。水流がマナトの周りをシュルシュルと廻り続ける。
「……正直に、言います」
マナトは、口を開いた。
「ん~?」
「あなたが、ジンであってほしくないと、尾行の途中から思っていました」
「マナト……」
ミトとラクトも、マナトのほうを向いた。
「とても働きもので、料亭の料理人達にも、この王国の住民たちにも好かれていて、歓楽街でちょっっぴり楽しんでいて……これで、ジンでなくて普通の人間だったらと、そう、思ってしまっていました」
「う~ん、ちょっと、いいかなぁ~?」
ジンが、マナトを見据えた。
「人間にも、肌が褐色だったり、目の青いのがいるだろう~?それと同じで、ジンにも、そういうのが、あるんだよね~」
「……はい」
「私、一応、マリードっていうんだよね~。……そうだね、ジン=マリードっていえばいいのかなぁ~」
「マリード……」
「だから、他のジンとは、ちょっと違うっていうことを、分かってほしいんだけどね~。あとね~」
「……」
ジンはちょっと薄めの眉毛をハの字にし、少し悲しそうな表情になった。
「君、ジンでなければよかったって今、言ったけど、ん~、あんまりいい気しないね~。人間だから、いいのか~い?ジンだから、悪いのか~い?」
「!」
「マナト、もう、やめとけ。また、惑わされるぜ」
「そう。それが、ジンなんだよ、マナト」
ミトとラクトが、ジンに目を向けながら、言った。
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