46 アクス王国/オベリスク

 門からすでに見えていた、細長い石柱の下まで来た。


 「おぉ!でけえ!」

 ラクトが石柱を見上げた。


 「オベリスクよ。このアクス王国の象徴ね」

 フィオナが言った。


 一枚岩で造られているようで、近くで見るともの凄い存在感と高さだった。上を見るのに、首が疲れるくらいに高い。


 遥か空へと続いている先端は、細く尖った四角錐になっていて、また、側面にはヤスリブ文字が記されていた。


 「ええと……」

 マナトは気になって、石柱を通りつつ文字を解読しようとした。


 「『天界と人界の架け橋なりて、予言の天使、渡り来なん』って、書いてますよ」


 ルナがマナトの隣に来て、説明してくれた。


 「へぇ〜」

 「なんか、ロマンチックですよね〜。『予言の天使』とか」

 「うん、確かに」

 「『天界の人界の架け橋』ってのも、いいですよねぇ。それに……私にとっての……」


 その後、小さな声でルナはボソッと言ってしまっていたため、マナトは聞こえなかった。


 「えっ、なんですか?」

 「フフっ、なんでもないです」


 オベリスクを過ぎると、すぐ広場になっていた。


 「ここが、アクス王国の市場だ」

 「す、すげぇ……なんじゃこりゃ!」

 「人、多過ぎ……」


 初めて来たミトとラクトは、唖然としていた。


 わぁわぁと、活気に満ち溢れ過ぎた人の声が、広場全体から聞こえて来る。


 「ははっ、なんか、人で酔いそう……」

 ミトが少し笑いながら、頭を抑えた。


 キャラバンの村の広場の十倍の広さ、そして、十数倍はいるであろう人の多さだった。


 「空いているところで、好きにやってくれいいからな。じゃあ、ケント、俺は仕事に戻る」

 「おう、サンキューな!」


 護衛団長は門のほうへと戻って行った。


     ※     ※     ※


 広場を少し行った先に、噴水があった。


 その噴水には、身体が布で覆われた、右手に持った剣を高らかに掲げている、大きな翼を広げた大人の天使の銅像が建っていた。


 「目印として分かりやすいな。ここにするか」


 ケントは天使像の噴水の前の、空いているスペースを陣取った。


 「うっし!んじゃ、ミトとラクトはラクダ4頭から交易品を降ろして、他のラクダ含めてラクダ舎へ移動させたら、市場を始めておいてくれ。やり方は、前に教えた通りだ。いいな?」

 「了解!」

 「任せとけ!」


 嬉々として、ミトとラクトは、ラクダから交易品である、キャラバンの村特産の、肌触りのよいリネン生地とシルク生地を取り外し、市場の準備を始めた。


 「私達も、せっかくだから手伝うわよ」

 フィオナ商隊も手伝いに入った。


 「マナト、俺達はラクダ3頭と一緒に、これから王宮内へ行くぞ」

 「王宮内、ですか」

 「そうだ。市場は市場で交易を行うが、今回は、王宮内での依頼もあってな。俺とマナトの、年長組でそちらは済ませるぞ」

 「了解」


 ラクダ4頭を率いて、ケントとマナトは更に王国の奥へと入って行った。

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