42 西のサライ/ケントの決断

 ラクダ達の首が垂れ、地面につき始めた。睡眠モードに入っている。


 ルナがウテナを連れて来た。


 「……あぁ、みんな集まってる〜。どうしたんでしゅか?」


 ウテナは眠気からか、どこか幼稚な、ろれつの回っていない声をしていた。目も垂れていて、どこか無防備な雰囲気が見受けられる。


 「すまない。寝ていたか?」

 ケントがウテナに言った。


 「いえいえ、ちょっと、ウトウトしてただけでしゅ」


 ……こ、これは、ギャップ萌えというヤツだ!!


 眠そうな様子のウテナを見ながら、マナトはそんなことを考えていた。


 ふと、マナトはラクトを見た。


 様子の違うウテナを見て、ラクトは目線を向けたり、そらしたりしていた。


 ……うわぁ、めっちゃ、意識してる。

 マナトは笑いそうになった。


 「まず、先の盗賊団と、ジンについてだ」

 「えっ、盗賊団とジンに、何か関係があるんですか?」


 ケントの言葉に、ミトが反応した。


 「ああ。おそらくジンだが、ここの管理人の話していたことやら、他にいたキャラバン達の情報、さらに前のサライでの情報を踏まえて考えると、どうやら出現したのは、前のサライから、目的の国、アクス王国へと繋がる、最短のキャラバンルートだ」

 「あっ、盗賊団がいるっていうので、僕らが諦めたルートですね」

 「そうだ。おそらく間違いないと思う。ジンに襲われたのは、おそらく盗賊団だろう」


 すると、フィオナも口を開いた。


 「今日の昼にこっちのキャラバンルートにいた盗賊団も、その残党だったと考えられるわ。たまたま、鉢合わせてしまったってことね」

 「へぇ。たまにはジンも、いい事するじゃねえか」

 「ちょっとラクト……!」


 軽口をたたいたラクトを、マナトはたしなめた。


 「……確かに、盗賊団とか、悪い輩ばかり狙ってくれればいいんだけどね」

 ミトが苦笑しながら言った。


 ケントが続ける。


 「ジンは盗賊団を襲撃した後、消息を絶っている。俺達がこれから行こうとしている、アクス王国に入っていることは、十分に想定される状況だ」

 「それじゃあ、行商は……」

 「いや、俺達も、アクス王国に入ることにする」

 「おっ!いいすねぇ〜、強気な感じ」

 「ただし、滞在期間は1泊2日だけだ。必要な交易を済ませたら、速やかに王国を去り、帰路につくことにする」

 「なるほど」

 「アクス王国は、クルール地方の中でも一番巨大な国だ。治安も行き届いているし、万一ジンが紛れ込んでいたとしても、護衛団がいる。とはいえ、長居は無用ということだな」


 そしてケントは、フィオナ商隊を見た。


 「んで、旅は道連れってことで、フィオナ商隊にも同行してもらえることになった」

 「あぁ、なるほどぉ。それで呼ばれたんでしゅね〜」


 ウテナが目をこすりながら、まるで小さな子供のように言った。


 「だいじょぶでしゅよ〜」


 ウテナの言葉に、ルナも同意の頷きをした。

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