43 西のサライ/夜の回廊にて
「もちろん、タダでというわけじゃない」
ケントが、フィオナ商隊の3人を見た。
「一緒に来てもらうかわりに、交易品で得た収入の一部を、フィオナ商隊にも分け与えることにする」
「うわ〜い、やったぁ〜」
「フフっ、ちょっと、ウテナ……」
ルナがウテナに、少し笑いながら注意した。
フィオナも苦笑していたが、やがてケントに言った。
「大丈夫よ、ケント。このサライからアクス王国まで近いし、地理的にも、アクス王国から私達の国まで、直で戻れるし」
「ありがとう、フィオナ。でも、協力してもらったらお礼、キャラバンのお約束事だからな」
「そう。分かったわ」
「うっし。そんでだ……」
その後、ケントから、明日の移動中における注意事項があり、解散となった。
マナトは風呂に入り、その後、ラクトと共に携帯食料の薫製肉を食べながら、火照った身体を冷やしつつ、回廊内を歩いていた。
中庭の中心にある焚き火はまだ燃えているが、段々と炎が小さくなって来ていた。あと少し経てば、消えてしまうだろう。
ラクダ達の首は皆、地面についていて、心地よく眠っているようだ。
「もう、ウテナも、寝てるよな」
熟睡するラクダ達を見ながら、ラクトが言った。
「あぁ、そうだね。ウテナさん、さっき、かなり眠そうにしてたし、さすがに寝てるんじゃない?」
「そうだよな」
「フフっ、気になるんだ?」
「なっ!んな訳ねえだろ!」
「ウテナさん、かなり、昼と雰囲気、違ってたよね」
「べ、別に?……てか、お前こそ、ルナとずっと会話してたよな」
「あっ、あれはね……」
「おうおう、お前こそ、ルナのこと、気にしちゃってるんじゃ?」
……あっ、そういえば。
「ラクトって、クルール地方の出身なの?」
「えっ、なんだよ、いきなり。生まれも育ちも、クルール地方のキャラバンの村だぜ」
「あっ、そうなんだ」
「んっ?なんだよ」
「いや、何でも」
……両親のどちらかが、ムシュフかラハム出身だったりするのかな?まあ、いいか。
「おい、そんなことよりルナ……あっ、おい、アレ」
「んっ?……うわっ」
見ると、ケントとフィオナが、2人で回廊内を歩いていた。
とっさにラクトとマナトはアーチの裏に隠れた。
2人はサライの出入り口である、大きな門のほうに向かっている。
「アレって、あれだよな、デートってヤツだよな?」
「分からないけど……」
「うわぁ。えっ、ちょっと、これ、どうしたら、いいかな?」
「フフっ、いや、ラクトがあたふたしても、しょうがないよ」
「そっ、そうだよな」
「……知らないフリをしていたほうが、いいかな」
「おっ、おう」
そして、次の日。
「それじゃ、行くぞ!」
ケントを先頭に、合同商隊は出発した。
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