33 共行③/盗賊団との戦い

 「あっ、マナトやっぱ、ストーップ!」

 「おーっとっと!?」


 マナトはこけそうになった。ケントを見ると、笑顔で、ラクダのほうを指差していた。


 「マナトはラクダ達をまとめて、護衛しててくれ」

 「えっ、でも……」


 会話をしている間にも、黒の集団は、商隊を包囲するように、サッと陣形を展開した。


 そして、ダガーや双剣、棍棒など、それぞれ武器を構えた。


 少なくても15人、こちらの人数の倍はいる。


 「かなり人数が……」

 「たぶん、大丈夫だ。なっ?」


 ケントはミトとラクトを見た。2人はコクリと頷いた。


 「マナト、ラクダ達を頼んだ」

 「了解」


 ――ピュ〜。


 マナトはラクダ達を集合させる笛を鳴らした。ラクダ達がマナトのもとへと集まってくる。


 「後方一人!端のラクダ狙ってるわよ!」

 フィオナが怒鳴った。


 「くっ!」


 マナトが振り向く間もなく、双剣を構えた敵の一人が跳躍していた。マナトのもとに行こうとする、一番端で小走りに行くラクダに襲いかかった。


 水壷から水を、ダメだ!間に合わない!


 ――カキィィーーンッ!


 敵の持つ双剣が宙へ舞った。


 「なにっ!?」

 「ラクダには触れさせねえよ?」


 ラクトだった。逆手持ちに握ったダガーで敵の持つ双剣の片方をはじき飛ばしていた。


 「クソっ!」

 ラクトに標的を変えた敵は、片方だけとなった双剣で斬り掛かった。


 ――スッ、スッ。


 剣先が見えているのか、ラクトは何のこともなげに華麗によける。


 ――カキィン!


 もう片方の双剣も飛ばした。相手は丸腰になった。


 「はい。いっちょ、あがり」

 「ラクトナイス!」


 マナトの言葉に、ラクトはグーサインした。


 ラクダ達は、みんなマナトの元へと集合できた。相変わらずの脱力系の顔だが、どこかそわそわした動きをしている。やはり不安なのだろう。


 「……クソっ!」


 丸腰になった敵が武器を拾おうと、近くに落ちていた双剣に飛びつこうとした。


 ――ドッ!


 「うがっ!」


 ラクトが追い討ちの蹴りをお見舞いした。吹き飛んだ敵はドサっと地面に倒れると、動かなくなった。痛みで立ち上がれないか、気を失ったようだ。


 「寝てな」


 ラクトは敵の持っていた双剣を拾うと、マナトに投げた。


 「持っといてくれ」

 「はいよ」


 マナトは双剣を拾った。


 ちなみにキャラバンは対人間の場合、戦いにおいては出来る限り敵を殺すことはしない。


 これは、敵に情けをかけるということではなく、敵を引かせるということを目的とした戦いをしているためだった。


 敵の武器を奪ったり、負傷させたり等の損害を与え、相手の戦闘力を削ぐほうが、キャラバンとしては都合がよかった。


 それに、万一相手を殺してしまって、他の相手が捨て身の攻撃などを取ろうものなら、それこそ損壊を招きかねない。それを避けるためでもあった。


 「やるねぇ、あのコ。んじゃ、こっちも……」


 フィオナが目の前の敵を見据えた。

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